味方のエラーで我が子が失点した時、「今のは投手のせいじゃない」と言いたくなったことはありませんか。
確かに、誰のミスだったかを整理することは大切です。しかし、その答えを探している間にも、試合は次の一球へ進んでいきます。
佐々木朗希投手はメジャー自己最速163.8キロを記録した一方、外野守備のミスと捕逸が重なって先制点を失いました。それでも直後の打者を抑え、投球を続けました。僕たち未経験パパが子どもと一緒に見たいのは、失点した瞬間の表情だけではなく、そこから何を整え直したかです。
今回は「誰が悪いか」から少し離れ、投手、捕手、野手、指導者、そして親が、次の一球へ戻るために果たせる役割を考えます。
まず事実整理|163.8キロを出した場面と、ミスが重なった失点場面を分けて見る
自己最速101.8マイルを計測した
まず、見出しだけを読んで試合の流れを混同しないように、事実を整理しておきましょう。
ドジャース対ヤンキース戦。佐々木投手は直球で101.8マイル、約163.8キロを計測しました。これはメジャー自己最速です。
ただし、163.8キロを出したことと、守備のミスが重なって失点したことを一続きの出来事として捉えるべきではありません。速球の威力を示した場面と、不運なプレーが重なった場面は分けて見る必要があります。
少年野球でも、試合を一つの印象でまとめてしまうことがあります。
「今日は打たれた」
「エラーで崩れた」
「途中から集中力が切れた」
けれど、1試合の中には、良かった回、乱れた一球、仲間に助けられたプレー、自分で立て直した場面が混在しています。結果だけで一本の線を引かず、場面を分けて見る。それが、子どもの成長を見逃さない最初の観戦眼です。
長打、外野の守備失策、捕逸が連続した
先制点を失った場面では、複数のプレーが重なりました。
長打を許し、その処理で外野手に守備失策が記録され、走者は先の塁へ進みます。続く投球を捕手が止められず、公式記録は捕逸。走者が生還しました。
流れを分けると、次のようになります。
1. 投手が長打を許した 2. 外野の処理ミスで走者が先の塁へ進んだ 3. 捕手が投球を捕れず、捕逸で走者が生還した
得点は一つでも、そこへ至るプレーには複数の選手が関わっています。野球では、一つの打球や一球が投手だけで完結するとは限りません。
少年野球なら、さらに連鎖は起きやすくなります。外野手が後逸し、中継が慌てて本塁へ投げ、捕手が捕れず、ベースカバーも遅れる。最初は一つのミスだったはずが、全員の焦りによって走者を余分に進めてしまうのです。
ここで大切なのは、最初のミスをした子を探し出すことではありません。どの段階なら、チームとして連鎖を止められたかを見ることです。
1失点でも自責点は0——公式記録が分けている二つの責任
佐々木投手の成績には「1失点・自責点0」と記録されました。
失点は、その投手がマウンドにいる間に相手が得た点です。一方の自責点は、失策や捕逸の助けがなければ入らなかったと判断される点を除いて計算されます。公認野球規則 9.00 記録に関する規則には、失策の扱いや自責点の考え方が定められています。
この仕組みは、「投手はまったく悪くない」「野手だけが悪い」と責任者を決めるためにあるのではありません。投球によって生じた結果と、守備を含めて生じた結果を分け、選手の働きをできるだけ公平に記録するためのものです。
佐々木投手は長打を許しました。そこは投球結果として残ります。しかし、普通の守備が行われていれば、その走者が同じように得点したとは限りません。だから、失点は記録されても自責点にはならなかったのです。
この区別を知っていると、子どもへ「今のは誰のせい?」と聞く代わりに、もっと野球らしい問いを渡せます。
「打たれた後、どこで進塁を止められたかな」
「次に同じ形になったら、みんなで何を確認すればいいだろう」
責任を分けて記録する知識を、責任を押しつける材料ではなく、次の準備を考える材料に変えたいところです。
見出しの「不運」だけでは見えない、その後の立て直し
この試合の価値は、「163.8キロを投げたのに不運な失点をした」という部分だけではありません。
佐々木投手はその後も試合を壊さず、5回2/3を投げ切りました。最終成績は5奪三振、1失点・自責点0。チームも2対1で逆転勝利しています。
MLB公式の試合記事では、101.8マイルの球速や投球成績に加え、守備失策と捕逸、逆転勝利まで確認できます。
「不運に泣いた」で話を止めてしまえば、佐々木投手は運に振り回された被害者のままです。しかし実際には、感情を表す場面があっても、次の打者を抑え、その後も投球を続けました。
少年野球の子どもに伝えたいのも、まさにここです。
ミスは起きる。悔しさも出る。それでも、試合を壊さないために次の一球を準備することはできる。立て直しとは、何も感じないことではなく、感じた後に自分の仕事へ戻ることなのです。

なぜミスは連鎖するのか|技術不足だけでは説明できない子どもの心理
「自分が取り返す」という焦りが次の判断を急がせる
仲間がエラーをすると、「自分が助けなきゃ」と思う子がいます。その気持ちは優しさであり、責任感でもあります。
しかし、「助ける」が「今すぐ自分が取り返す」に変わると、判断が急ぎ始めます。
外野手が後逸した直後、中継の内野手が走者も送球先も十分に見ず、力任せに本塁へ投げる。捕手は送球を確実に止めるより、すぐタッチしようと前へ出る。投手は三振を取ろうとして、普段以上に力む。こうして、最初のミスとは別のミスが生まれます。
野球は、一人が劇的なプレーで帳尻を合わせる競技ではありません。ミスの直後ほど必要なのは、派手な挽回ではなく、普段の仕事へ戻ることです。
「一つアウトを取る」
「まずボールを止める」
「次の塁へ行かせない」
この小さな目標まで戻せれば、連鎖は止まりやすくなります。
失点より怖いのは監督の叱責、親のため息、仲間の視線
子どもは失点だけを怖がっているとは限りません。
「監督に怒られるかもしれない」
「仲間に迷惑をかけたと思われる」
「ベンチへ下げられるかもしれない」
「親がまた残念そうな顔をする」
こうした不安へ注意を奪われると、目の前の打者や走者を見る余裕がなくなります。
僕たち親は、言葉を発していなくても影響を与えています。大きなため息、首を振る動き、隣の保護者へ向けた苦笑い。それらは大人には一瞬の反応でも、ミスをした子にとっては追加の判定に見えることがあります。
もちろん、親にも感情はあります。大事な場面でエラーが出れば、残念に思うのは自然です。感情そのものを責める必要はありません。
ただし、親が感情をそのまま表情や態度へ流すと、子どもは次のプレーと親の評価を同時に背負うことになります。親が減らせるのはミスではなく、この「追加の重さ」です。
注意が過去のミスへ残ると、準備姿勢とカバーが遅れる
ミスを引きずるとは、落ち込んだ表情を見せることだけではありません。注意の一部が過去へ残り続ける状態です。
「なぜ捕れなかったんだろう」
「また自分のところに飛んできたらどうしよう」
「さっきのプレーで嫌われたかもしれない」
頭の中でこれらを考えている間も、投手は次の投球動作へ入ります。すると、腰を落として構えるのが遅れる。打球への一歩目が出ない。ベースカバーを忘れる。アウトカウントを勘違いする。声が止まる。
どれも、技術が急に下手になったからではありません。今使える注意の量が減っているのです。
だから試合中に必要なのは、詳しい原因分析ではありません。アウト数、走者、打者、次のカバー。今すぐ必要な情報へ注意を戻すことです。
反省は大切です。しかし、反省には適した時間があります。次の投球が始まる直前は、最も不向きな時間です。
少し厳しく言えば「気合が足りない」で片づける大人も連鎖の一部
少し厳しい言い方をすれば、子どものミスを「気合が足りない」「集中していない」で終わらせる大人も、ミスの連鎖に加わっています。
気合という言葉は便利です。原因を細かく見なくても、叱った側には指導した感覚が残るからです。しかし、子どもには次に取るべき行動が伝わりません。
「集中しろ」と言われても、どこを見るのか。
「切り替えろ」と言われても、何をすれば切り替わるのか。
「声を出せ」と言われても、誰へ何を伝えるのか。
これらが曖昧なままなら、子どもは怒られないために大きな声を出すだけで、本来の準備へ戻れないことがあります。
もちろん、厳しい言葉で奮い立つ子もいます。優しい声だけが正解でもありません。大切なのは、大人が自分の感情を吐き出すために言葉を使うのか、子どもの次の行動を明確にするために使うのかです。
「切り替えろ」では切り替えられない|次の一球へ戻るための考え方
感情を消すのではなく、振り返る時間を後ろへ移す
「ミスを忘れろ」と言われても、簡単に忘れられるものではありません。
むしろ、忘れようとするほど頭に残ることがあります。大切なのは、悔しさや恥ずかしさを消すことではなく、振り返る時間を後ろへ移すことです。
試合中は、こう考えます。
「悔しい。それは試合後に振り返る。今は走者三塁、2アウト」
感情を否定せず、今の仕事と分けるのです。これなら、泣きそうな子や表情に出やすい子にも現実的です。
筆者には、素人審判として判断し、誤審も経験した過去があります。自分で判定する側に立つと、完璧な判断がいかに難しいかが分かります。それでも試合は次のプレーへ進みます。現実が不完全である以上、必要なのは「ミスをしない人」になることだけではなく、「ミスの後も役割を続けられる人」になることです。
呼吸、視線、セルフトークで注意を「今」に戻す
注意を現在へ戻すためには、頭の中だけで頑張るより、短い動作を決めておくほうが実行しやすくなります。
たとえば、次のような方法です。
- 一度、長く息を吐く
- 外野のフェンスやスコアボードへ視線を移す
- 帽子やグラブに触れる
- マウンドの土をならす
- 「一球」「低く」「一つずつ」と短く口にする
重要なのは、派手なルーティンを作ることではありません。その動作を「過去のプレーは後で扱い、今の仕事へ戻る合図」として繰り返すことです。
呼吸なら、焦った時ほど吸おうとするより、まず長く吐く。セルフトークなら、「エラーするな」のように失敗を避ける言葉ではなく、「正面」「低く」「腕を振る」のように実行したい動作を短く示す。視線なら、うつむき続けるのではなく、いったん遠くを見て視野を広げる。
どの方法が合うかは子どもによって異なります。親が一方的に決めるより、平時に本人が選べる形にすると、押しつけになりにくいでしょう。
チームで共有した手順なら、切り替えは練習できる
切り替えを個人の性格だけに任せると、「メンタルが強い子はできる、弱い子はできない」という話になってしまいます。
しかし、チーム全体で手順を共有すれば、切り替えは連係プレーになります。
ミスが出たら、投手は呼吸を整える。捕手はボールを持って一度テンポを作る。内野手はアウト数と走者を確認する。外野手は中継とバックアップ位置を見直す。ベンチは一度だけ短い言葉を送る。
誰か一人が感情を完璧に制御できなくても、周囲の決まった動きが「今やること」を思い出させてくれます。
これは家庭でも同じです。子どもが失敗した時、親がすぐ原因を聞き出すのか、少し時間を置くのか。落ち着くために何をするのか。事前に大まかな手順を共有しておけば、感情が大きく動いた場面でも戻る場所があります。
研究結果はヒントであって万能な処方箋ではない
呼吸、セルフトーク、イメージ、ミス後のリセット手順などは、子どもの自己統制感や粘り強さを育てる方法として研究も進められています。児童・中学生277人を対象にしたスポーツ心理学プログラムの研究でも、競技中の自己統制感や粘り強さ、レジリエンスなどの改善が報告されています。
ただし、「この呼吸をすれば必ず立ち直れる」「この声かけが全員に効く」と断定するのは危険です。対象年齢、競技、指導環境、追跡期間が違えば、同じ結果になるとは限りません。
野球だけを対象にした研究でなければ、投手と捕手の関係や、守備中にプレーが連続する特殊性までは十分に反映されていない可能性もあります。
研究から受け取るべきなのは、魔法の言葉ではありません。
切り替えは生まれつきの根性だけで決まるものではなく、具体的な行動として練習できる。その可能性を知り、子どもやチームに合う形へ小さく試すことです。
ミス後の役割分担|全員で「次の一球」を準備する
投手の仕事——呼吸を整え、次の狙いと球種へ集中する
味方がミスをした時、投手は感情を表に出してはいけないのでしょうか。
そんなことはありません。悔しさが出るのは自然です。ただ、野手を責める態度が長引けば、守る側は「次もミスしたらどうしよう」と縮こまり、さらに動きが悪くなります。
投手の最優先は、次の一球を投げられる状態へ戻ることです。
まず一度、長く息を吐く。捕手からボールを受け取る。次の打者と走者を確認する。そして、「低めへ投げる」「腕を振る」「捕手のミットへ集中する」といった、自分で制御できる一つの仕事へ意識を絞ります。
味方を励ます余裕があれば理想的ですが、無理に笑顔を作る必要はありません。黙って構え直し、次の打者へ向かう姿そのものが、野手へのメッセージになることもあります。
捕手の仕事——テンポを戻し、一つだけ前向きな確認を伝える
捕手は、ミス後の空気を整えやすいポジションです。
ボールを回収し、急ぎすぎず投手へ返す。必要ならマウンドへ近づき、短い合図を送る。ただし、ここで多くを伝えようとすると、投手の頭はさらに混乱します。
「低めは前で止める」
「走者三塁、打者集中」
「一つずついこう」
伝えるなら一つです。技術修正、配球、守備位置、励ましを全部詰め込む必要はありません。
筆者の息子は高学年でキャッチャーを任された経験があり、試合ではピッチャーの状態や流れを見てタイムを取る場面がありました。捕手の適性は、肩の強さや捕球技術だけでは測れません。周囲の状態を見て、今必要な間を作れる気配りも重要な能力です。
捕手自身がミスをした場合も同じです。捕逸を取り返そうと難しい球を要求するより、まず投手と次の一球を共有する。捕手は反省役ではなく、次のプレーを始める接続役です。
内外野手の仕事——アウト数、走者、カバー位置を声でつなぐ
ミスの直後、野手が送るべき声は「ドンマイ」だけではありません。
励ましは大切ですが、それに加えて、次のプレーに必要な情報を声でつなぎます。
「2アウト、三塁」
「一つで終わり」
「外野はバックホーム」
「二遊間、二塁カバー」
具体的な声は、ミスをした本人だけでなく、動揺したチーム全体の注意を現在へ戻します。
内野手はアウト数、走者、次に狙う塁を共有する。外野手は中継までの距離や、別の外野手が処理した時のバックアップ位置を確認する。ボールが自分のところへ飛んでこなくても、守備の仕事は残っています。
少年野球では、エラーをした子だけがうつむき、周囲は気まずくて黙る場面もあります。そんな時こそ、「次はどうする」を声にできる子を評価したいものです。それは打率や失策数には残らなくても、チームを救う立派なプレーです。
指導者の仕事——情報を絞り、交代を懲罰にしない
指導者には、試合中の修正と試合後の振り返りを分ける役割があります。
ミスの直後に長い技術指導を始めると、次の打球へ備える注意が失われます。試合中は「低めは前へ」「一つアウトを取ろう」「走者三塁」のように情報を絞り、詳しい原因分析は後へ回すべきです。
交代が必要なこともあります。ケガの危険がある、動揺が大きい、疲労で基本動作が保てない、試合進行に支障がある。こうした判断は子どもを守るために必要です。
一方、ミスをするたび即座に交代させれば、子どもは「失敗すると居場所を失う」と学ぶかもしれません。交代を懲罰に見せないためには、基準を普段から説明しておくことが重要です。
厳しさをなくすという話ではありません。ミスそのものと、安全、準備状態、チームの役割を分けて判断する。それが、次の挑戦を残す厳しさです。

パパが結果以外に見る5つのサイン|失策数に出ない成長を見つける
ミス後、何秒・何球で構え直せたか
エラーの数だけを見ていると、子どもの成長を見落とします。
同じ一つのエラーでも、その後ずっと下を向いていた試合と、深呼吸して次の一球から構え直した試合では中身が違います。
そこで見たいのが、ミスから準備姿勢へ戻るまでの時間です。10秒で戻れたか。次の一球には間に合ったか。次の打者までに整理できたか。
最初は一回を通して引きずっていた子が、次の打者で戻れるようになった。それは明確な成長です。
「エラーしたけど、その次はちゃんと腰を落としていたね」
こう伝えれば、親が結果だけでなく回復の過程を見ていたことが子どもへ届きます。
アウトカウントと走者を自分たちで確認できたか
ミスの直後は、頭の中の情報が飛びやすくなります。だからこそ、アウトカウントと走者を自分たちで確認できたかは重要なサインです。
ベンチに言われてから動いたのか。捕手や内野手が先に声を出したのか。外野まで情報が届いたのか。
特に少年野球では、最初のミスを取り返そうとして、本来投げる必要のない塁へ送球することがあります。状況確認ができれば、無理な本塁送球を避け、一つ先の進塁で止める選択も可能です。
親としては、「どうしてあそこへ投げたの?」と責めるより、「あの時、アウトはいくつで、走者はどこにいた?」と事実を確認するほうが、子ども自身の思考を引き出せます。
答えられなくても、すぐ正解を教える必要はありません。次の観戦で一緒に数えるだけでも、野球を見る解像度は上がっていきます。
声、バックアップ、カバーを省かなかったか
失策数には、声やバックアップは記録されません。
誰かが後逸した時、反対側の外野手が後ろへ回っていたか。捕手が一塁方向へ転がる球を追った時、投手が本塁をカバーしたか。悪送球になっても、さらに後ろへ備える選手がいたか。
これらは「何も起きなければ目立たない仕事」です。しかし、ミスが起きた時にはチームを救います。
試合後、「今日はノーヒットだったね」と結果だけを口にする代わりに、「センターが捕りに行った時、ちゃんと後ろへ走っていたね」と伝えてみてください。
子どもは、目立たない仕事も見てもらえていると分かれば、次も続けやすくなります。レギュラーや打撃成績だけではない貢献を認めることは、チームで過ごす価値を広げることにもつながります。
失点後も自分で制御できる行動を続けたか
野球では、自分で制御できないことがたくさんあります。
打球がどこへ飛ぶか。審判がどう判定するか。味方が捕れるか。相手がどれほど速いか。結果を完全には支配できません。
一方で、自分で制御しやすい行動もあります。
- 投手なら、腕を振る
- 捕手なら、体でボールを止める
- 野手なら、準備姿勢を取る
- 全員なら、声を出す
- ボールから離れた選手なら、カバーへ走る
失点後もこれらを続けられたなら、スコアとは別の成功があります。
親が「勝ったか」「打ったか」「エラーしなかったか」だけを評価すると、子どもは制御できない結果に振り回されます。制御可能な行動を見つけて伝えることで、次の試合でも再現できる成功が残ります。
「叫んだか」より、その後の3プレーを見る
プロの試合では、選手が叫んだ、顔をしかめた、ベンチで何かを口にした、といった一瞬の表情が大きく取り上げられます。
しかし、感情が出たことと、試合を投げ出したことは同じではありません。
佐々木投手の場面でも、本当に見るべきなのは感情を表した一瞬だけではなく、その後です。直後の打者をどう抑えたか。その後の投球へどう入ったか。投球内容をどこまで維持したか。
少年野球でも、ミス直後の3プレーを見る習慣をおすすめします。
1. 次の一球で構えられたか 2. 次の打球でカバーへ動けたか 3. 次の守備機会で普段の動作を続けられたか
この見方ができれば、親の観戦は「失敗の監視」から「回復の発見」へ変わります。
グラウンドと家庭で使える実践策|ミス後の10秒と帰りの車内を設計する
チームで決める「ミス後の10秒ルール」4ステップ
ミスが起きてから次の投球までの短い時間に、全員がやることを決めておくと、切り替えは具体的になります。
たとえば、「ミス後の10秒ルール」です。
1. 一度、長く息を吐く 2. 投手と捕手が決めた合図を交わす 3. 全員でアウト数と走者を確認する 4. 次の一球の役割を一語で伝える
「一つ」「前」「カバー」「低く」など、言葉は短くします。
大切なのは、本当に10秒ぴったりで終えることではありません。ミスの原因分析へ入り込む前に、次のプレーの準備を共有することです。
このルールは指導者だけで決めず、選手と一緒に言葉を選ぶと実行しやすくなります。低学年なら二つの手順から始めても構いません。全員が覚えられ、試合中に再現できることを優先しましょう。
練習はエラーの有無ではなく、その後の3プレーを採点する
ノックでエラーをしたら最初からやり直す。それだけでは、子どもは「捕れなければ失敗」としか学べません。
実戦では、エラーの後もプレーが続きます。そこで練習でも、あえて難しい打球やワンバウンド送球を入れ、その後の動きを評価します。
- 後逸した後、すぐボールを追えたか
- 周囲がバックアップへ入ったか
- アウト数と走者を確認したか
- 次の3プレーで準備姿勢を取れたか
- 失点後の先頭打者に全員で声を出せたか
エラーをゼロにする練習と、エラーが起きても被害を広げない練習は別物です。両方が必要です。
試合を撮影する場合も、失敗した瞬間だけを切り取るのではなく、その後の動きまで残すと役立ちます。筆者にも試合や練習を継続的に撮影し、スロー再生や比較へ活用した経験があります。ただし、子どもが見たいと言った時に見せることが前提です。良かれと思って映像反省会を押しつけると、記録が監視道具に変わってしまいます。
スタンドからのNG指示と、短く届く応援の使い分け
ミスの直後、スタンドから技術指示を重ねるのは避けたいところです。
「前に落とせ!」
「腰が高い!」
「なんで投げた!」
「切り替えろ!」
どれも間違いとは限りません。しかし、指導者と親から別々の指示が届けば、子どもの注意はさらに分散します。親が第二の監督になってしまうと、子どもは誰の声に従うべきか分からなくなります。
親の声は、次の行動を邪魔しない短さにします。
「一つずつ!」
「次の一球!」
あるいは、何も言わずに見守ることも立派な応援です。
「大丈夫」「気にするな」が合う子もいれば、ミスを改めて意識してしまう子もいます。正解は一律ではありません。失敗した子どもの気持ちを切り替える方法を紹介したメンタルトレーナーの記事でも、望む声掛けを事前に選手と話し合うことが提案されています。平時に、「ミスした時は声をかけてほしい?少し静かにしてほしい?」と聞いておくと、親の善意と子どもの希望を合わせられます。
帰りの車を反省会にしない——話すか黙るかを平時に決める
試合直後の車内は、親にとって質問したくなる時間です。
「どうしてあの球を投げたの?」
「声が出ていなかったよね」
「コーチに何か言われた?」
しかし、子どもは試合で身体も感情も使い切っています。その状態で詳しい説明を求められると、会話が振り返りではなく取り調べのようになることがあります。Little Leagueの保護者向け資料でも、感情的に疲れた試合直後の車内を反省会にしないことが勧められています。
まずは水分、食事、休息。話すなら、本人が話し始めるのを待つ。聞く場合も、「今日のこと、今話したい?後にする?」と選べる形にします。
家庭であらかじめ、次のような約束を決めておくのも有効です。
- 帰りの車では技術反省を始めない
- 本人が話したい時は最後まで聞く
- 親から聞くのは一つまで
- 振り返るなら入浴や食事の後、または翌日にする
- 映像は本人が見たい時だけ使う
筆者は、技術指導は監督やコーチ、親はメンタルの支援に回ることを大切にしています。親に技術知識がないから引くのではありません。子どもが安心して戻れる場所を残すことは、親にしか担えない役割だからです。

まとめ
佐々木朗希の価値は163.8キロだけでも、自責0だけでもない
佐々木朗希投手の登板には、メジャー自己最速163.8キロという分かりやすい驚きがありました。1失点・自責点0という、投手と守備の結果を分けて見る記録もありました。
しかし、少年野球へ持ち帰りたい最大の学びは数字だけではありません。
守備失策と捕逸が重なっても、直後の打者を抑え、その後も投球を続けたこと。感情が動いても、自分の仕事へ戻り、逆転の可能性をチームへ残したことです。
速い球を投げられなくても、この立て直しは練習できます。そして、投手だけでなく、捕手、内外野手、指導者を含めたチーム全員で支えられます。
親はミスを消せなくても、追加の評価圧を減らせる
親には、試合中のエラーを消すことも、判定を変えることもできません。
けれど、ため息や過剰な指示を抑え、子どもが背負う追加の評価圧を減らすことはできます。
「誰のミスだったか」ではなく、「誰が最初に次の準備を始めたか」を見る。
失策数ではなく、構え直すまでの時間を見る。
結果ではなく、声、カバー、バックアップ、腕を振る姿を見る。
こうした観戦眼を持つと、試合後の言葉も変わります。
「エラーしたね」ではなく、「その後のカバーを続けていたね」。
「勝てなかったね」ではなく、「失点後も次のアウトを取りにいけたね」。
子どもが次も実行できる行動を見つけて伝えることが、親にできる支援です。
次の一球を見守る時間が、親子の今しかない絆になる
子どもが主役で、親はコントロールしない。無理はさせないけれど、放置もしない。その間にあるのが、見守りながら環境と関わり方を整えるという役割です。
ミスをした我が子を見るのは、親にとっても苦しいものです。助けたくなり、正解を言いたくなり、時には誰かのせいにしたくもなります。
そんな時こそ、一つ先のプレーを見てみましょう。
構え直したか。仲間へ声を出したか。カバーへ走ったか。もう一度、腕を振れたか。
子どもが自分の力で次の一球へ戻る時間を、親が奪わずに見守る。そこには、ナイスプレーを一緒に喜ぶだけでは得られない信頼があります。
ミスのない試合は、ほとんどありません。しかし、ミスの後に何をするかを親子で学べる試合は、何度でもあります。
次にグラウンドで失策が起きた時は、誰が悪かったかを急いで決める前に、その後の3プレーを見てください。
その短い時間にこそ、スコアブックには残らない成長と、今しか作れない親子の絆が表れています。
