少年野球のオフシーズンは「遊び」が最強の練習!プロに学ぶ冬の過ごし方と親の焦り解消法
「また隣のチームの子、冬合宿に行くんだって…」
「うちは土日も公園で遊んでるだけだけど、本当にこれでいいのかな?」
12月に入り、寒さが厳しくなると同時に、私たち少年野球パパの心にも冷たい風が吹き始めます。オフシーズン。試合がなくなり、練習時間が短くなるこの時期、SNSを開けば「冬の強化合宿」「走り込み」「地獄のノック」といった言葉が飛び交い、なんだか自分たちだけが取り残されているような焦燥感に駆られることはありませんか?
特に、私のように野球経験がないパパにとって、冬の過ごし方は未知の領域です。「このままじゃ春にレギュラーを奪われるんじゃないか」「もっと厳しく練習させた方がいいんじゃないか」……そんな不安が頭をよぎり、ついつい子供に「ゲームばっかりしてないで素振りしなさい!」と声を荒らげてしまった経験、あなたにもあるかもしれません。
でも、ちょっと待ってください。
本当に、小学生の冬に「厳しい練習」だけが必要なのでしょうか?
実は、最新のスポーツ科学やプロ野球選手の育成論において、少年期の冬こそ「遊び」が最強のトレーニングであるという見方が主流になりつつあります。阪神タイガースの主砲・大山悠輔選手や、北海道日本ハムファイターズの今川優馬選手など、第一線で活躍するプロ選手たちも、少年時代は「楽しむこと」を原点に育ってきました。
【🎧 聴くブログ】忙しいパパ・ママへ
この記事の内容をギュッと凝縮した音声解説(ポッドキャスト風)をご用意しました。
「読む時間がない!」という方は、通勤中や家事の合間にラジオ感覚でお聴きください。(再生時間:約15分)
この記事では、野球未経験のパパだからこそ知っておきたい、「オフシーズンを『遊び』で制する驚きのメソッド」を、プロ選手のエピソードや科学的根拠を交えて徹底解説します。
読み終える頃には、あなたの焦りは消え、「なんだ、今のままでよかったんだ」と、こたつでみかんを食べる子供の姿を愛おしく思えるようになっているはずです。さあ、肩の力を抜いて、温かいコーヒーでも飲みながら一緒に考えていきましょう。
「冬も練習しなきゃ」と焦っていませんか?
12月のカレンダーをめくると、週末の予定がぽっかりと空いていることに気づきます。シーズン中は毎週末、朝早くからお弁当を作り、泥だらけのユニフォームを洗い、車出しや審判の手伝いに奔走していたあの日々が嘘のようです。
本来なら、「やっとゆっくりできる!」と喜ぶべきところでしょう。しかし、真面目で子供思いなパパほど、この「空白の時間」に恐怖を感じてしまうのです。
周りの子はスクールや合宿へ…取り残される不安
「〇〇君、冬の間は平日も野球スクールに通うらしいよ」
「隣町のチームは、雪の上で走り込み合宿をするんだって」
ママ友やパパ友から入ってくるそんな情報に、心臓がキュッとなる感覚。わかります。私自身、息子が低学年の頃、冬に何もさせていないことに猛烈な罪悪感を覚え、嫌がる息子を連れて無理やり公園でキャッチボールをしたことがありました。寒さで手がかじかみ、ボールがうまく投げられない息子に対し、「なんでそんなこともできないんだ!」とイライラしてしまった苦い記憶です。
「周りがやっているから、自分たちもやらなきゃいけない」。
この同調圧力にも似た焦りは、少年野球界特有のものかもしれません。特に、高学年になりレギュラー争いが激しくなってくると、「冬の間に差をつけろ」という言葉が呪いのように頭を回ります。
しかし、冷静になって考えてみてください。その「スクール」や「合宿」は、本当にあなたのお子さんの成長段階に合っているでしょうか? 周りのペースに巻き込まれて、子供自身の「休みたい」「遊びたい」という心の声を無視してはいないでしょうか。
実は危険な冬の「やりすぎ」練習(怪我と燃え尽き)
焦りからくる「やりすぎ(オーバーユース)」は、百害あって一利なしです。特に冬場は気温が低く、筋肉や関節が硬くなっています。そんな状態で、夏と同じような強度の投げ込みや素振り、過度な走り込みを行うことは、故障のリスクを跳ね上げます。
「野球肘」や「野球肩」といった障害は、シーズン中の疲労が蓄積した冬場に、無理な練習を重ねることで発症するケースが後を絶ちません。成長期の骨はまだ柔らかく、軟骨は傷つきやすい。一度壊してしまうと、取り返しのつかないことになりかねないのです。
また、身体的な怪我以上に怖いのが、「心の怪我(バーンアウト)」です。
一年中、野球、野球、野球……。大人でさえ、仕事漬けの毎日は息が詰まりますよね。感受性豊かな子供たちにとって、野球以外の世界に触れる時間がないことは、精神的な逃げ場を失うことと同義です。「野球が嫌いになったわけじゃないけど、なんか疲れた」。そんな理由で、中学進学を機に野球を辞めてしまう子がどれだけ多いことか。
冬の「やりすぎ」は、子供から未来の可能性を奪う行為かもしれません。
この記事の目的:プロも実践した「遊び」の効能を知り、親子で笑顔の冬を過ごす
だからこそ、私は声を大にして言いたいのです。
「冬は、遊べ!」と。
これは決して、野球を放棄することではありません。むしろ、「遊び」という名の、最も効率的で、最も理にかなったトレーニングを行うことを提案したいのです。
これからご紹介するのは、単なる精神論ではありません。運動生理学や脳科学の観点からも裏付けられた、「遊び」がもたらす驚異的な効果についてです。そして、実際にプロ野球選手たちが少年時代にどのように「遊び」を通して能力を伸ばしてきたのか、その実例を紐解いていきます。
この記事を読む目的はたった一つ。
パパであるあなたの「焦り」を解消し、親子で心から笑い合える冬を取り戻すことです。
親が笑顔でいれば、子供は安心して羽を伸ばせます。そして、十分に羽を伸ばした子供は、春になれば驚くほどの飛躍を見せてくれるはずです。さあ、常識を疑い、新しい冬のスタンダードを一緒に作っていきましょう。

なぜ今、「遊び」が野球上達の近道なのか?(科学的根拠)
「遊びが練習になるなんて、そんなうまい話があるわけない」
そう思われるかもしれません。昭和のスポ根アニメで育った私たち世代にとって、上達とは「苦しい練習の対価」として得られるものだという刷り込みがあるからです。
しかし、令和のスポーツ科学は、その常識を覆しています。特に小学生年代においては、特定の動きを繰り返す「反復練習」よりも、多様な動きを含む「遊び」の方が、運動能力の向上に効果的であることがわかってきています。
「ゴールデンエイジ」に本当に必要なのは反復練習ではない
皆さんは「ゴールデンエイジ」という言葉を聞いたことがありますか?
一般的に9歳〜12歳頃を指し、一生のうちで最も運動神経が発達する時期と言われています。この時期に覚えた動きは、大人になっても忘れない「即座の習得」が可能です。自転車に一度乗れるようになれば、何年乗らなくても乗れるのと同じ原理です。
「だからこそ、今のうちに野球の技術を詰め込まなければ!」
そう考えるのは早計です。
ゴールデンエイジに必要なのは、「野球の動き」ではなく、「多様な動きの回路」を脳に作ることです。
人間の神経系は、12歳までにほぼ100%完成すると言われています。この時期に、投げる、捕る、打つといった野球特有の動き「だけ」を反復させると、脳内の神経回路がその動きに特化して固まってしまいます。これを「早期専門化の弊害」と呼びます。
一方で、鬼ごっこで急に方向転換したり、木登りでバランスを取ったり、ジャングルジムをくぐり抜けたりといった「遊び」の中には、「走る・跳ぶ・投げる・捕る・蹴る・組む・バランス・リズム」といった、あらゆるスポーツの基礎となる動き(コーディネーション能力)が含まれています。
遊びを通じて多様な神経回路を張り巡らせておけば、それが土台となり、将来どんなスポーツをするにしても(もちろん野球でも)、高度な技術をスムーズに習得できる「器」が大きくなるのです。
マルチスポーツのすすめ:野球以外の動きが身体操作を高める
「マルチスポーツ」という考え方が、近年注目を集めています。季節によって異なるスポーツに取り組む、あるいは複数の競技を並行して行うスタイルのことです。
アメリカのメジャーリーグ(MLB)では、ドラフト指名される選手の多くが、高校時代までアメフトやバスケットボールなど、複数の競技を経験しています。大谷翔平選手も、少年時代は水泳やバドミントンにも親しんでいたことは有名な話です。
日本スポーツ協会(JSPO)も、「アクティブ・チャイルド・プログラム(ACP)」を通じて、子供たちが遊びの中で多様な動きを身につけることを推奨しています。
- サッカー: 足元のステップワーク、瞬時の状況判断、視野の広さ(野球の守備範囲拡大に直結)
- 水泳: 肩甲骨の柔軟性、全身の連動性、心肺機能(しなやかな投球フォームの土台)
- バドミントン: 落下地点の予測、ラケット面を作る手首の操作(フライ捕球やバットコントロールに応用)
冬の間、野球チームの練習が休みなら、家族でスキーに行ったり、スケートをしたり、あるいは近所の公園でサッカーをしたりするのも素晴らしいトレーニングです。
「今日は野球の練習じゃないのか…」とガッカリする必要はありません。「今日はサッカーで、野球に必要なフットワークを鍛えているんだ!」とポジティブに捉え直しましょう。
「野球特化」が招く障害リスク:肘・肩を守るためのオフシーズン
「遊び」や「他競技」を取り入れるもう一つの大きなメリットは、「使いすぎ(オーバーユース)」による怪我の予防です。
野球は、基本的に「非対称」なスポーツです。右投げなら右手ばかり使い、バッティングも同じ方向にばかり体を捻ります。これを成長期に過度に繰り返すと、体のバランスが崩れ、特定の部位(肘、肩、腰)に負担が集中します。
冬に野球から少し離れ、左右対称の動きをするスポーツ(水泳やスキーなど)や、普段使わない筋肉を使う遊びを取り入れることは、偏った体のバランスを整える「リハビリ」のような効果も期待できます。
プロ野球の投手でさえ、オフシーズンはボールを投げない期間(ノースロー調整)を設けます。ましてや骨も筋肉も未発達な小学生が、冬の間も投げ続ける必要はありません。
「冬は野球の練習を休む」のではなく、「野球のために、野球以外の動きで体をアップデートする期間」。
そう考えれば、公園で走り回る子供の姿が、頼もしく見えてきませんか?
プロ野球選手の少年時代:「遊び」と「楽しむ心」が原点
「理屈はわかったけど、やっぱりプロになるような選手は、小さい頃から野球漬けだったんじゃないの?」
そんな疑問を持つパパのために、直近のニュースやインタビューから、現役プロ野球選手たちの少年時代のエピソードを紹介しましょう。彼らの原点には、驚くほど「遊び」と「楽しむ心」が溢れています。
阪神・大山悠輔選手が掲げる「キッズ・ファースト」の真意
2024年、阪神タイガースの主砲としてチームを牽引し、FA権を行使しての残留表明でファンを熱狂させた大山悠輔選手。彼が最近、球団に対してある要望を出したことが話題になりました。
それは、「キッズ・ファースト」の実現です。
大山選手は、自身のポジションであるファースト(一塁手)を、子供たちが憧れる「花形ポジション」にしたいと語り、ミットの開発にも協力していく姿勢を見せています。
大山選手自身、少年時代は決して「野球エリート」ではありませんでした。茨城県の田舎町で、自然の中で遊び回りながら基礎体力を培いました。彼が大切にしているのは、技術の巧拙よりも「子供たちが野球を好きでいてくれること」。
「プロ野球選手がかっこいい、野球が楽しい、と思ってくれる子供を増やしたい」
その想いの根底には、自身が野球を純粋に楽しんでいた少年時代の記憶があるはずです。冬の寒い日に、大人が強制する辛い練習で野球を嫌いになってしまっては、大山選手の願いとは逆行してしまいます。彼のように、まずは「野球が好き」「道具がかっこいい」というワクワク感を育てることが、親の最初で最大の役割なのかもしれません。
日本ハム・今川優馬選手の夢「学童野球チームをつくりたい」に見る原風景
「執念」のキャッチフレーズでファンから愛される、北海道日本ハムファイターズの今川優馬選手。彼もまた、少年野球への熱い想いを持つ一人です。
2025年11月末、北海道旭川市で行われた野球教室で、今川選手は将来の夢についてこう語りました。
「いつか学童野球のチームをつくりたい」
現役バリバリの選手が、セカンドキャリアとして「監督」ではなく「チーム作り」を夢見る。そこには、現在の少年野球界が抱える課題(勝利至上主義や親の負担など)への問題意識と同時に、自身が体験した「野球の楽しさ」を次の世代に伝えたいという強い意志が感じられます。
今川選手は、社会人野球を経てプロ入りした苦労人ですが、そのプレーからは常に「野球ができる喜び」が溢れています。彼の少年時代もまた、雪国・北海道という環境もあり、冬場は野球以外の遊びや雪かきなどで足腰を鍛えていたことでしょう。
「冬場にボールが使えないなら、どうやって楽しむか?」
そんな工夫や遊び心が、今の彼のファンを魅了するプレースタイルに繋がっているのかもしれません。野球教室で子供たちに向ける彼の優しい眼差しは、「上手くなること」よりも「楽しむこと」の大切さを物語っています。
他競技から学んだスター選手たち(サッカー、水泳などの経験)
大谷翔平選手(ドジャース)のエピソードはあまりにも有名ですが、改めて触れておきましょう。彼はリトルリーグ時代、平日はバドミントンや水泳に取り組み、肩甲骨の柔軟性や全身のバランスを養いました。父親は「野球ノート」で交換日記をしていましたが、技術的な指導よりもメンタルや考え方を伝えることを重視していたと言います。
また、山本由伸選手(ドジャース)も、中学時代までは特別な筋力トレーニングは行わず、ブリッジや柔軟体操など、自分の体を思うように動かすための基礎練習(ボディコントロール)に時間を費やしていました。やり投げの動きを取り入れた独特のトレーニングも、「遊び心」と「探究心」の延長にあると言えます。
彼らに共通するのは、「野球という枠にとらわれない」こと。
一つの型に嵌め込むのではなく、様々な動き(遊び)を通して自分の体の可能性を探っていたのです。
もし、あなたのお子さんが「今日は野球じゃなくてサッカーやりたい」と言い出したら、それは「浮気」ではなく「クロストレーニング」のチャンスです。
「よし、じゃあパパがキーパーやるから、思いっきりシュートしてこい!」
そう言って付き合ってあげる度量が、未来のメジャーリーガーを育てる……かもしれませんよ?

家でゴロゴロ?いいえ、それは「野球脳」と「回復」のトレーニングです
外は北風が吹き荒れ、雪が舞う季節。暖かい部屋でこたつに入り、テレビを見たりゲームをしたりして過ごす休日。「こんなにダラダラしていていいのか…」と不安になるパパさん、安心してください。
家でゴロゴロすることは、決して「サボり」ではありません。それは、成長期の体にとって必要不可欠な「回復」の時間であり、同時に「野球脳(インテリジェンス)」を鍛える絶好の機会なのです。
成長期の体に必要な「完全休養」の勇気
まず、「休むこと」への罪悪感を捨てましょう。
子供の骨は、端っこにある「骨端線(成長線)」という軟骨部分が成長することで伸びていきます。ここは非常にデリケートで、過度な負荷がかかると損傷しやすく、最悪の場合、成長障害を引き起こします。
また、筋肉は「トレーニング→破壊→修復(回復)→強化」というサイクルで成長します。つまり、強くなるのは練習している時ではなく、休んでいる時(寝ている時)なのです。
冬は日照時間が短く、セロトニンの分泌が減りやすいため、体調を崩しやすい時期でもあります。この時期にしっかりと睡眠を取り、体を休めることは、春以降の身長の伸びやパフォーマンス向上に直結する「積極的休養」です。
「今日は一日家でゴロゴロする!」
子供がそう決めたなら、それは体が休息を求めているサイン。「よし、今日は『回復トレーニング』の日だな!」と明るく認めてあげましょう。
こたつでミカンを食べながら…プロ野球珍プレー好プレーから学ぶ「予測力」
年末年始の定番番組といえば「プロ野球珍プレー好プレー大賞」。これを親子で見ることも、立派な勉強です。
ただ笑って見るだけではもったいない。ここでパパの出番です。
「今のプレー、なんでアウトになったと思う?」
「この選手、ボールが来る前にどこを見てたかな?」
そんな問いかけを少しだけ混ぜてみてください。
例えば、珍プレー(エラー)のシーン。
「グラブを出すのが早すぎたね」「足が止まってたね」と、失敗の原因を一緒に考えることで、子供の中に「やってはいけない動き」のイメージが蓄積されます。
逆に、好プレー(ファインプレー)のシーン。
「打った瞬間に、もうスタート切ってるね!」「カバーに入ってる選手がいるから、思い切って飛び込めたんだね」と、画面の端に映る選手の動きに注目させることで、「予測力」や「状況判断」の重要性を学べます。
こたつでミカンを食べながら、リラックスした状態で見るからこそ、子供の脳には映像がスムーズに入ってきます。グラウンドで怒鳴られながら聞く説教の100倍、効果があるかもしれません。
野球ゲーム(パワプロ・プロスピ)で覚える配球とルール
「ゲームばっかりして!」と叱る前に、そのゲームが『実況パワフルプロ野球』や『プロ野球スピリッツ』なら、少し見方を変えてみませんか?
最近の野球ゲームは非常にリアルです。配球(キャッチャーのリード)、守備のシフト、カウントごとの戦術、盗塁のタイミングなど、実際の野球に必要な要素が詰まっています。
特に低学年の子は、複雑な野球のルール(タッチアップ、インフィールドフライ、振り逃げなど)を言葉で説明されても理解できません。しかし、ゲームの中で失敗しながら「あ、今のフライは走っちゃダメなんだ!」と体感することで、驚くほど早くルールを覚えます。
また、高学年になれば配球の読み合いも勉強になります。
「追い込んだら、次は外のボール球で誘ってみようか」
「相手は足が速いから、ストレート中心でいこう」
そんな会話をしながら親子で対戦すれば、それはもう立派な「バーチャル戦術ミーティング」です。
親子で語る「今年のベストプレー」:言語化能力を育てる
冬の夜長、お風呂に入りながら、あるいは布団に入ってから、こんな話をしてみてください。
「今年の試合で、一番嬉しかったプレーはどこだった?」
ヒットを打った瞬間、フライを捕れた瞬間、ベンチで大きな声を出したこと。なんでも構いません。子供が自分の言葉でその時の状況や感情を話すことは、「言語化能力」を鍛えるトレーニングになります。
自分のプレーを客観的に振り返り、言葉にする力。これは、将来スランプに陥った時に自分で原因を分析し、解決策を見つける力(メタ認知能力)につながります。
「あの時、パパもすごく嬉しかったよ。〇〇が諦めずに走ったからセーフになったんだよね」
パパからの肯定的なフィードバックを加えることで、その記憶はより鮮明な「成功体験」として脳に刻まれます。それが、辛い時に心を支える自信になるのです。
寒くても楽しい!冬に親子で実践したい「遊びトレーニング」5選
さて、ここからは実践編です。
「遊びが大事なのはわかったけど、具体的に何をすればいいの?」
そんなパパのために、野球未経験でも、狭い場所でも、道具がなくてもできる、親子で楽しめる「遊びトレーニング」を5つ厳選しました。
ポイントは、「トレーニングだと思わせないこと」。「さあ、練習するぞ!」ではなく、「これやって遊ぼうぜ!」と誘うのがコツです。
①本気の鬼ごっこ:アジリティと走塁センスを磨く
最強のトレーニングは、いつの時代も「鬼ごっこ」です。
ただ追いかけるだけでなく、少しルールを工夫してみましょう。
- しっぽ取り鬼ごっこ:
お尻にタオルや紐を挟み、それを奪い合います。相手の背後に回り込むステップ、相手の動きをフェイントでかわす重心移動。これらは、野球の守備(回り込み)や走塁(タッチをかわす動き)に直結します。 - 線鬼(ライン鬼):
公園の地面に引かれた線の上や、タイルの上しか走れないルールで行います。制限された状況でどう動くか、頭と体を同時に使うアジリティ(敏捷性)トレーニングになります。
パパも本気でやってください。子供は「パパに勝ちたい!」という一心で、限界ギリギリのスピードとターンを繰り出してきます。それが最高の練習です。(パパのアキレス腱断裂には十分ご注意を…!)
②雪合戦・ドッジボール:正しい「投げる」動作の基礎固め
雪国なら雪合戦、雪がなければ柔らかいボールでドッジボール。
物を投げるという動作は、楽しみながら数多くこなすことで洗練されます。
特に雪合戦は、足場が悪い中でバランスを取りながら投げるため、下半身の粘りや体幹が自然と鍛えられます。また、相手に当てられないように身を隠しながら投げる動きは、スナップスローやクイックスローの練習にもなります。
ドッジボールなら、「利き手じゃない方で投げる」ルールを追加するのもおすすめ。体の左右バランスを整え、器用さを養うことができます。
③バドミントン・テニス:落下地点に入る感覚と空間認識能力
100円ショップで売っているおもちゃのセットで十分です。
バドミントンやテニスは、飛んでくるシャトルやボールの「落下地点」を瞬時に予測し、そこに「自分の体を持っていく」能力(空間認識能力)を養います。
これは、外野フライの追い方そのものです。
「風で戻された!」「思ったより伸びた!」
そんな不規則な動きに対応しようとステップを踏むことで、野球のノックでは得られない対応力が身につきます。また、ラケット面を操作して相手のいないところに打ち返す動きは、バットコントロールや流し打ちの感覚にも通じます。
④新聞紙ボール打ち:動体視力とミート力を養う室内遊び
家の中でバットを振るのは危ないですが、これなら大丈夫。
新聞紙を丸めてガムテープで止めたボールを作ります。バットは、ラップの芯や、手で持てるくらいのプラスチックの棒でOK。
パパが近くからふわっと投げて、子供が打つ。
ボールが不規則に変化したり、小さかったりするので、しっかりと「ボールを見る」集中力が養われます(動体視力)。また、芯(ミートポイント)で捉えないと飛ばないので、ミート力向上の特効薬になります。
部屋の中に「ホームランゾーン(ソファの上など)」や「アウトゾーン」を決めて、野球盤のように点数を競うと盛り上がります。障子やガラスを割らないように、柔らかい新聞紙ボールを使うのがポイントです。
⑤昔遊び(メンコ・コマ):指先の感覚と手首のスナップ
意外かもしれませんが、昔ながらの遊びには野球に通じる要素が満載です。
- メンコ: 地面に叩きつける動作は、投球時の「腕の振り下ろし」や「リリースの瞬間の押し込み」の感覚に似ています。全身を使って腕を振る感覚が養われます。
- コマ回し・けん玉: 指先や手首の繊細な感覚(スナップ)を養います。変化球を投げる際の指先の感覚や、バット操作の手首の返しに役立ちます。
お正月に親戚が集まった時など、ぜひ昔遊びを提案してみてください。「パパ、昔は強かったんだぞ!」と威厳を見せるチャンスでもあります。
未経験パパだからできる!冬の「見守り」サポート術
ここまで紹介してきた「遊び」は、野球経験がなくても、いや、経験がないパパだからこそ、子供と同じ目線で楽しめるものばかりです。
最後に、冬の期間、親としてどう子供と向き合うべきか、その「心構え」と「サポート術」をお伝えします。
「教える」のではなく「一緒に遊ぶ」パートナーになる
野球経験のあるパパは、どうしても技術的なことを「教えよう」としてしまいがちです。
「肘が下がってるぞ」「腰が入ってない」
しかし、冬の遊びの時間にそんな指導は無用です。
未経験パパの強みは、「子供と一緒に、本気で遊べること」。
「うわー、負けた!悔しい!もう一回!」
パパが本気で悔しがり、本気で楽しんでいる姿を見れば、子供も自然と熱中します。その「熱中」こそが、ドーパミンを分泌させ、学習効率を最大化させるのです。
コーチになる必要はありません。最高の「遊び相手」になってあげてください。
道具の手入れをイベント化する:グラブ磨きで道具への愛着を
冬は練習が少ない分、道具と向き合う時間を作りましょう。
「今日はグラブ磨き大会だ!」とイベント化して、親子で一緒にグラブを磨きます。
YouTubeで「グラブの手入れ方法」などの動画を見ながら、見よう見まねで構いません。汚れを落とし、オイルを塗り込む。
「この一年、このグラブでいっぱい捕ったね」
「ここが擦り切れてるね、頑張った証拠だね」
そんな会話をしながら磨くことで、道具への愛着と感謝の心が育ちます。
きれいになったグラブを見ると、「早くこれで野球がしたい!」という気持ちが自然と湧いてくるものです。春へのモチベーションを高める、静かですが強力な儀式です。
食事と睡眠:春に身長を伸ばすための土台作り
冬は、体を大きくする最大のチャンスでもあります。
「たくさん動いて(遊んで)、たくさん食べて、たくさん寝る」。このシンプルなサイクルを回すことが、親ができる最大のサポートです。
特に食事は、特別なプロテインやサプリメントに頼る必要はありません。
農林水産省が推奨する「食事バランスガイド」などを参考に、温かい鍋料理などで野菜とタンパク質をたっぷり摂ることを意識しましょう。
- 鍋料理: 野菜、肉、豆腐などが一度に摂れ、体も温まる最強メニュー。
- お餅: お正月のお餅も、エネルギー源(炭水化物)として優秀です。
そして何より、睡眠。成長ホルモンは寝ている間に分泌されます。夜更かしせず、暖かい布団でぐっすり眠らせてあげてください。「寝る子は育つ」は、野球選手にとっても真理です。
まとめ:春、一回り大きくなった君に会うために

長いようで短い冬のオフシーズン。
周りの「強化合宿」や「スクール」の話題に心が揺れることもあるでしょう。でも、どうか焦らないでください。
焦らなくて大丈夫。子供は「遊び」の中で勝手に育つ
この記事で紹介したように、
- 鬼ごっこで培った敏捷性は、盗塁のスタートに。
- バドミントンで養った空間認識は、フライ捕球に。
- こたつで見たプロのプレーは、野球脳の深みに。
- そして、ゆっくり休んで大きくなった体は、フルスイングのパワーに。
春、グラウンドに戻った時、これら全ての「遊び」が点と点でつながり、驚くようなプレーとなって現れる瞬間が必ず来ます。子供の成長力は、大人の想像を遥かに超えています。
親の笑顔こそが、子供の最大のエネルギー源
一番大切なのは、パパであるあなたが、眉間にシワを寄せて「練習、練習」と追い立てるのではなく、笑顔で子供と向き合うことです。
家庭が温かく、居心地の良い場所であればあるほど、子供は外(グラウンド)でのチャレンジに勇気を持って飛び出していけます。この冬は、野球の技術指導はいったんお休みして、「親子の思い出作り」に専念してみてはいかがでしょうか。
「あの年の冬、パパと本気でやった雪合戦、楽しかったな」
将来、プロ野球選手になった息子さんが、ヒーローインタビューでそう語ってくれる日が来るかもしれません。いや、プロにならなくても、そんな温かい記憶は、息子さんの一生の宝物になるはずです。
さあ、今週末は難しい顔をして野球教本を読むのはやめて、お子さんを誘って公園へ出かけましょう。
「おい、鬼ごっこするぞ! パパは負けないからな!」
その一言が、最高の「冬の練習」の始まりです。
