126km小学生vs世界にバレる侍ジャパン。ニュースの「凄すぎる数字」に心が折れそうなパパへ贈るメンタル防衛術

スマホの野球ニュースを見て焦る父親と、無邪気に笑う野球少年 少年野球パパの応援指南

「えっ、小6で126キロ…? うそでしょ?」

スマホの画面をスクロールする指が止まりました。
画面に躍るのは、NPB12球団ジュニアトーナメントで驚異的な記録を出したスーパー小学生のニュース。
さらに別のニュースアプリを開けば、「世界にバレる」というハッシュタグと共に、2026年WBCに向けた侍ジャパン第1陣発表の話題が飛び込んできます。

すごい。日本の野球は明るい。
頭ではそうわかっているのに、なぜか胸の奥がチクリと痛むのです。

ふと、隣でテレビゲームに夢中になっている我が子を見ます。
週末の試合でベンチを温め続け、やっと回ってきた打席でも空振り三振だった息子。
「ご飯だよ」と言ってもゲームをやめず、妻に怒られている息子。

「……はぁ」

気づけば、深いため息が出ていました。
「あの子は世界にバレる才能があるのに、うちの子ときたら……」

もし今、あなたが同じようなため息をついているとしたら、この記事はあなたのためのものです。
連日の華やかなニュースの裏で、多くの「少年野球パパ」たちが、誰にも言えない劣等感と焦りに苛まれています。

でも、断言します。
その焦りは、あなたの愛情の深さゆえですが、同時に「猛毒」でもあります。

この記事では、メディアが報じる「他人のハイライト」に心を折られないためのメンタル防衛術と、世界にはバレなくても、パパだけが見つけられる「我が子の本当の才能」の探し方について、私の苦い失敗談を交えてお話しします。

読み終える頃には、きっとスマホを置いて、目の前の息子さんとキャッチボールがしたくなるはずです。

音声解説:世界にバレるニュースに疲れたパパへ

※AI生成による音声コンテンツにて、発音や読み方に違和感ございますが、ご了承ねがいます。


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  1. 「世界にバレる」ニュース連発!なぜ私たちはこんなに焦らされるのか?
    1. 連日の報道「126キロ小6」「WBC選出」が突きつける現実
    2. 「すごいね」の裏で感じる「うちはダメだ」という劣等感の正体
    3. 未経験パパほど陥りやすい「隣の芝生は青い」ならぬ「テレビの芝生は黄金」現象
  2. 【体験談】私の黒歴史…テレビの天才に感化され、息子を追い詰めたあの日
    1. きっかけは「プロ野球選手の幼少期」特集番組だった
    2. 「今日からやるぞ!」息子の気持ちを無視した早朝特訓の結末
    3. 息子から笑顔が消えた時、妻に言われたハッとする一言
  3. 冷静になろう。メディアが報じる「スーパーキッズ」のカラクリと確率論
    1. NPBジュニアトーナメント出場者は全小学生球児の「0.0何パーセント」?
    2. 「早熟」か「晩成」か。成長曲線の個人差をデータで知る
    3. メディアは「ハイライト」しか映さない。天才たちの「NGシーン」を想像できますか?
  4. 「世界にバレる」前に「親に壊される」リスク。焦りが招く3つの弊害
    1. 【フィジカル】成長期の骨端線損傷と「投げすぎ・やりすぎ」の代償
    2. 【メンタル】「バーンアウト(燃え尽き症候群)」は小学生でも起きる
    3. 【親子関係】家が「安らげる場所」から「評価される場所」に変わる恐怖
  5. 比較地獄からの脱出。「他人のハイライト」と「我が子の日常」を混ぜない思考法
    1. SNSやニュースを遮断する勇気。「情報ダイエット」のススメ
    2. 魔法の言葉「よそはよそ」。これは突き放す言葉ではなく「防衛」の言葉
    3. 比較対象を「昨日の我が子」だけに絞るための具体的なスコアリング術
  6. 世界にはバレなくてもいい。パパだけが見つけられる「3つの隠れ才能」
    1. 【準備の才能】玄関の靴を揃えた、道具を磨いた。その「丁寧さ」は球速より尊い
    2. 【聞く才能】補欠でもベンチで声を出し、コーチの目を見て話を聞ける力
    3. 【切り替えの才能】エラーして泣いても、翌日グラウンドに行けた「小さな勇気」
  7. それでも「もっと上達させたい」と願うパパへ。正しいサポートの距離感
    1. 技術指導はプロ(コーチ)へ。親の役割は「最高の衣食住」と「送迎」のみ
    2. 伊藤大海選手も実践?野球以外の「遊び」こそが運動神経を育てる逆説
    3. 長期視点を持とう。「世界にバレる」のは20歳を過ぎてからで遅くない
  8. まとめ:我が子の「一番のファン」に戻ろう。焦りは禁物、成長はマラソンだ

「世界にバレる」ニュース連発!なぜ私たちはこんなに焦らされるのか?

2025年の年末。野球界はかつてないほどの熱気に包まれています。
しかし、その熱気は時に、私たちのような「ごく普通の野球少年の親」にとっては、焼けるような焦燥感となって降りかかってきます。

連日の報道「126キロ小6」「WBC選出」が突きつける現実

まず、私たちの心を揺さぶっているのは、現在進行形で開催されている「NPB12球団ジュニアトーナメント KONAMI CUP 2025」のニュースでしょう。
プロ野球の各球団がセレクションで選び抜いた「地域の精鋭たち」が集うこの大会。
そこで報じられる数字は、もはや小学生のそれではありません。

  • 「球速126キロを記録」
  • 「身長183センチの大型スラッガー」
  • 「女子選手が異例の抜擢でサヨナラ打」

文字通り「桁違い」の才能たちです。
さらに追い打ちをかけるのが、2026年WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に向けた話題です。
大谷翔平選手や伊藤大海選手といったスター選手たちが選出され、海外メディアやSNSでは「日本の才能がまた世界にバレてしまう!」といった称賛の言葉が飛び交っています。

これらのニュースは本来、野球ファンとしてワクワクすべきものです。
しかし、ひとたび「プレイヤーの親」という当事者意識を持ってしまうと、その輝きは強烈な「影」を私たちの心に落とします。

「すごいね」の裏で感じる「うちはダメだ」という劣等感の正体

なぜ、他人の子供の活躍を見て、これほどまでに落ち込んでしまうのでしょうか。
それは、私たちが無意識のうちに「我が子の未来」と「ニュースの中の天才」を同じ天秤にかけてしまっているからです。

息子が野球を始めた日、私たちは心のどこかで夢を見ました。
「もしかしたら、うちの子もプロになれるかも?」
「甲子園に行けるかも?」

その淡い期待があるからこそ、同世代(あるいは少し上の世代)の圧倒的な「完成品」を見せつけられると、夢と現実のギャップを突きつけられたような気分になるのです。

「同じ小6なのに、体格が全く違う」
「うちの子なんて、キャッチボールすらまともに続かないのに」

ニュースで報じられる彼らは、いわば「選ばれし0.1%」の存在です。
しかし、毎日泥だらけのユニフォームを洗濯し、週末の早起きに耐えている私たちは、どうしても「努力しているのだから、何かしらの成果が欲しい」と願ってしまいます。
その「成果」の基準が、メディアによって勝手に「スーパーキッズレベル」に引き上げられてしまっているのです。

未経験パパほど陥りやすい「隣の芝生は青い」ならぬ「テレビの芝生は黄金」現象

特に注意が必要なのが、私のような「野球未経験パパ」です。
経験者のパパであれば、「120キロを投げるのがどれだけ異常なことか」「小学生で完成されていることが必ずしも将来の成功を約束しないこと」を、肌感覚として知っています。

しかし、未経験の私たちは、その「すごさ」の解像度が低い分、メディアの煽り文句をそのまま受け取ってしまいます。
「そうか、今の小学生はこれくらいできないとダメなのか」
「今のうちにこういう練習をさせないと、取り残されるんだ」

隣のチームの上手い子を見て「いいなぁ」と思う「隣の芝生は青い」現象どころではありません。
テレビやネットで見る、全国トップレベルの、しかも一番良いシーンだけを切り取った映像を見て、「それに比べてうちは…」と絶望する。
これはもはや「テレビの芝生は黄金」現象とでも呼ぶべき、極めて不公平な比較です。

私たちは、黄金の芝生と、我が家の庭の土を比べて、勝手に落ち込んでいるのです。
まずはその「比較の土俵がおかしい」ことに気づく必要があります。


【体験談】私の黒歴史…テレビの天才に感化され、息子を追い詰めたあの日

早朝の公園で息子を厳しく指導しすぎてしまう父親
テレビの天才に感化され、無理な朝練を強いてしまった苦い記憶

偉そうなことを言っていますが、私自身、この「比較の罠」にまんまとハマり、息子を深く傷つけた経験があります。
あれは、息子が小学4年生の時のことでした。今思い出しても胸が締め付けられる、私の「黒歴史」です。

きっかけは「プロ野球選手の幼少期」特集番組だった

その日、テレビではある有名なプロ野球選手のドキュメンタリーが放送されていました。
「彼は小学生時代、毎日欠かさず父と朝5時から特訓をしていた」
「遊びを断って、ひたすら素振りを繰り返した」

そんなナレーションと共に、ボロボロになったグラブや、すり減ったバットが映し出されました。
番組は感動的に構成されており、最後にその選手はこう言いました。
「あの時の父の厳しさがあったから、今の自分がある」

私は雷に打たれたような気分でした。
当時、息子のチームでの成績は低迷していました。試合に出てもエラーばかり。バッティングも当たらない。
私はその原因を「息子のやる気のなさ」や「練習量の不足」だと思い込んでいました。

「これだ……!」
私は安直にもそう思ってしまったのです。
「俺が甘かったんだ。心を鬼にして、プロの親のように接しなければ、息子はうまくならないんだ」

その夜、私は寝ている息子を叩き起こさんばかりの勢いで宣言しました。
「明日から、毎朝5時半に起きて公園に行くぞ。パパが特訓してやる」

「今日からやるぞ!」息子の気持ちを無視した早朝特訓の結末

翌朝から、地獄のような日々が始まりました。
まだ薄暗い公園。眠い目をこする息子に、私は未経験ながらネットで調べた練習メニューを次々と課しました。

「もっと腰を落とせ!」
「なんでそんな簡単なボールが捕れないんだ!」
「テレビで見たあの子は、もっと鋭いスイングをしてたぞ!」

息子が「眠い」「疲れた」と弱音を吐こうものなら、私の怒号が飛びました。
「そんな根性じゃ、うまくならないぞ!」
「あの子たちは、お前が寝てる間も練習してるんだぞ!」

私の頭の中にあったのは、目の前の息子ではなく、テレビで見た「理想の天才キッズ」と「それを育て上げた熱血な父親像」でした。
自分がその父親役を演じることに酔っていた、と言ってもいいかもしれません。

息子は、私の剣幕に押され、泣きながらバットを振り続けました。
私はそれを「成長痛」だと勘違いし、満足げに仕事へ向かっていました。

息子から笑顔が消えた時、妻に言われたハッとする一言

そんな生活が2週間ほど続いたある日曜日。
チームの練習に行く準備をしていた息子が、玄関で動かなくなりました。
「……お腹、痛い」

顔面は蒼白で、脂汗をかいています。
私は一瞬、「サボりか?」と疑ってしまいました。なんて最低な父親でしょう。
しかし、妻はすぐに異変に気づきました。

「今日はお休みさせます」
妻はきっぱりとそう言い、息子を寝室へ連れて行きました。
そして、リビングに戻ってきた妻は、今まで見たこともないような冷ややかな目で私を見据え、こう言いました。

「あなた、最近の○○(息子)の顔、ちゃんと見てた?」
「えっ? いや、毎日練習見てるし……」
「見てないわよ。あなたが順調にこなしてるか監視してただけでしょ」

妻は続けました。
「あの子、最近家で全く笑わなくなったのよ。テレビで野球中継が始まると、ビクッとして部屋に逃げるようになったの。あなたが野球を『怖いもの』にしちゃったのよ」
「あなたの自己満足のために、あの子を壊さないで」

頭を殴られたような衝撃でした。
「自己満足」。その言葉がグサリと刺さりました。
私は息子のためにやっているつもりで、実は「すごい選手の親になりたい」「熱心なパパだと思われたい」という自分の欲を満たしていただけだったのです。

私は、ニュースの中の「成功例」だけに目を奪われ、その裏にあるかもしれない「潰れていった親子」のリスクを全く想像できていませんでした。
この失敗は、私が「世界にバレる」ようなニュースに踊らされ、目の前の我が子を見失った典型的な例です。


冷静になろう。メディアが報じる「スーパーキッズ」のカラクリと確率論

私のようにならないために、まずは冷静になりましょう。
メディアが報じる華々しいニュースを、一歩引いた視点(メタ視点)で分析してみます。
感情ではなく「数字」と「ロジック」で捉え直すことで、過度な焦りを消すことができます。

NPBジュニアトーナメント出場者は全小学生球児の「0.0何パーセント」?

例えば、今話題のNPB12球団ジュニアトーナメント。
出場できるのは各球団16名×12球団で、約192名です。

一方、日本全国にはどれくらいの野球少年がいるでしょうか。
少子化で減っているとはいえ、スポーツ庁や各種団体の推計によれば、学童野球(小学生)の競技人口は数万人〜十数万人規模と言われています。
仮に小学6年生だけでも数万人はいるでしょう。

単純計算しても、あの舞台に立てるのは全野球少年のほんの数パーセント、あるいは0.数パーセントの世界です。
NPB公式サイトを見れば、その選考プロセスの厳しさがわかります。彼らは「地域の代表」どころか、「数万人の頂点」に近い存在です。

つまり、彼らと我が子を比べるのは、
「東大理三に合格した天才高校生」と「普通の高校生」を比べて、「なんであなたはノーベル賞級の研究ができないの?」と怒っているようなものです。
比較対象の母集団があまりにも違いすぎるのです。

「早熟」か「晩成」か。成長曲線の個人差をデータで知る

次に知っておくべきは「成長曲線(スキャモンの発育曲線)」の話です。
子供の身体的成長には個人差が非常に大きく、特に小学生段階では「生まれ月」による差も無視できません。

  • 早熟型: 小学生のうちに身長が伸び、筋肉もつき始める子。今の時点で「スーパーキッズ」になりやすい。
  • 晩成型: 中学・高校、あるいは大学になってから急激に伸びる子。

メディアで取り上げられる「126キロ小学生」や「183センチ小学生」は、現時点での「早熟型のトップランナー」であることが多いです。
もちろん彼らの努力は素晴らしいですが、それは「今の時点での完成度が高い」ということであり、「将来のプロ入りが確定している」わけではありません。

逆に、今体が小さく、力がないお子さんも、それは単に「成長のピークがまだ来ていないだけ」かもしれません。
JSPO 日本スポーツ協会などの資料でも、成長期の過度な競技活動への注意喚起とともに、個々の成長速度に合わせた指導の重要性が説かれています。
今勝てないからといって、将来も勝てないとは限らないのです。

メディアは「ハイライト」しか映さない。天才たちの「NGシーン」を想像できますか?

そして、これが最も重要ですが、メディアは「光」しか映しません。
ニュースになるのは「ホームランを打った瞬間」「三振を奪った瞬間」だけです。

そのスーパーキッズたちも、

  • 家では野菜を嫌がって泣いているかもしれません。
  • ゲームの時間が長すぎて親に怒られているかもしれません。
  • 先週の練習試合では、平凡なフライを落球したかもしれません。

しかし、そんな「人間らしいNGシーン」はニュースになりません。
私たちは、編集された「完璧なハイライト映像」だけを見て、それを「彼らの日常」だと錯覚します。
そして、目の前にある「我が子のNGシーンだらけの日常」と比べて落ち込むのです。

「他人のハイライトと、自分の日常を比べてはいけない」
これはSNS時代のメンタルヘルスの鉄則ですが、少年野球の世界でも全く同じことが言えるのです。


「世界にバレる」前に「親に壊される」リスク。焦りが招く3つの弊害

メディア報道に煽られ、親が焦って無理なトレーニングやプレッシャーを与え続けると、どうなるか。
「才能が開花する」よりも遥かに高い確率で、「心や体が壊れる」という最悪の結果を招きます。

【フィジカル】成長期の骨端線損傷と「投げすぎ・やりすぎ」の代償

成長期の子供の骨は、大人の骨とは全く別物です。
骨の両端には「骨端線(成長線)」と呼ばれる軟骨層があり、ここが成長することで身長が伸びます。
しかし、この部分は非常に柔らかく、過度な負荷に弱いという特徴があります。

「あの子は毎日100球投げているらしいぞ」
そんな噂を真に受けて、未発達な我が子に同じことをさせれば、「野球肘(離断性骨軟骨炎など)」を引き起こし、最悪の場合、骨の成長障害や、一生ボールを投げられない体にしてしまう可能性があります。

公益財団法人 全日本軟式野球連盟のガイドラインでも、小学生の投球数制限や練習時間への配慮が強く推奨されています。
「今」勝つために無理をさせて、将来の可能性を摘んでしまっては本末転倒です。
「世界にバレる」以前に、怪我で「野球ができなくなる」ことだけは、親として絶対に避けなければなりません。

【メンタル】「バーンアウト(燃え尽き症候群)」は小学生でも起きる

「もっと頑張れ」「なんでできないんだ」
親からの過度な期待とプレッシャーは、子供の精神をじわじわと蝕みます。

近年、小学生や中学生の段階で競技からドロップアウトする「バーンアウト(燃え尽き症候群)」が問題になっています。
野球が「楽しい遊び」から「親の機嫌を取るための義務」「失敗できない苦行」に変わった瞬間、子供の情熱は失われます。

厚生労働省の「こころの耳」などでメンタルヘルスの情報を学べばわかりますが、逃げ場のないプレッシャーは、子供の自己肯定感を著しく低下させます。
「野球をやめたい」と言い出せる子はまだマシかもしれません。親の期待に応えようと無理を重ね、ある日突然、朝起きられなくなったり、心のバランスを崩したりするケースも少なくないのです。

【親子関係】家が「安らげる場所」から「評価される場所」に変わる恐怖

私が一番恐ろしいと思うのは、親子関係の崩壊です。
本来、家庭は子供にとって、外で戦って疲れた羽を休める「安全基地」であるべきです。
チームで監督に怒られ、試合で失敗しても、「家に帰ればパパとママが笑って迎えてくれる」という安心感があるから、子供はまた明日も頑張れます。

しかし、親がコーチ化し、家でもダメ出しや反省会を始めると、家は「第2のグラウンド」「評価される場所」に変わってしまいます。
子供には逃げ場がありません。

「パパは僕のことなんて好きじゃないんだ。野球が上手い僕が好きなだけなんだ」
子供にそう思わせてしまったら、たとえプロ野球選手になれたとしても、子育てとしては失敗ではないでしょうか。
WBCのニュースを見て焦るあまり、かけがえのない親子の信頼関係を犠牲にしてはいけません。


比較地獄からの脱出。「他人のハイライト」と「我が子の日常」を混ぜない思考法

スマホをしまって目の前の息子との会話を楽しむ父親
SNSやニュースの情報を遮断し、目の前の我が子に向き合う大切さ

では、どうすればこの苦しい「比較地獄」から抜け出し、健全なメンタルを取り戻せるのでしょうか。
明日から実践できる、具体的な「思考の切り替え法」を提案します。

SNSやニュースを遮断する勇気。「情報ダイエット」のススメ

物理的ですが、最も効果があるのは「見ないこと」です。
NPBジュニアトーナメントの期間中や、WBCの話題で持ちきりの時期は、意識的に野球ニュースやSNSを開くのを控えましょう。

  • X(旧Twitter)の「おすすめ」タブを見ない。
  • YouTubeの「スーパー小学生」系の動画を見ない(チャンネル登録を一時解除する)。
  • 少年野球の保護者LINEグループの通知をオフにする。

これを私は「情報ダイエット」と呼んでいます。
他人の家のキラキラした情報は、あなたにとって「栄養」ではなく「脂肪(ストレス)」にしかなりません。
入ってくる情報を遮断すれば、自然と目の前の我が子だけに意識が向くようになります。

魔法の言葉「よそはよそ」。これは突き放す言葉ではなく「防衛」の言葉

昔、親によく言われた「よそはよそ、うちはうち」という言葉。
子供の頃は理不尽に感じたこの言葉が、親になった今、最強の「メンタル防衛呪文」であることに気づきます。

「よそはよそ」と唱えることは、決して諦めや突き放しではありません。
「我が家には我が家のペースがあり、独自の幸せの定義がある」という、親としてのプライドを持つ宣言です。

  • よそは120キロ投げる。すごいね。
  • うちは昨日よりご飯を一杯多く食べた。すごいね。

この2つは、全く別の価値観で動いている独立した事象です。
「よそ」を称賛しつつ、それと「うち」の価値を連動させない。
この線引きを親がしっかり持つことが、子供を守る防壁(シールド)になります。

比較対象を「昨日の我が子」だけに絞るための具体的なスコアリング術

「比べるな」と言われても、人間の脳は比較してしまうものです。
ならば、比較対象を変えましょう。
「他人の子」ではなく、「過去の我が子」と比べるのです。

おすすめなのが、独自の「親子スコアブック」をつけることです。
ヒットや三振といった結果ではなく、以下のような「成長ポイント」を記録します。

  • 1ヶ月前: キャッチボールが10回しか続かなかった。
  • 今日: 20回続いた!
  • 半年前: 試合で三振して泣いて帰ってきた。
  • 今日: 三振したけど、ベンチで大きな声で応援していた。

こうして記録すると、確実に子供が成長していることが「可視化」されます。
「世界レベル」とは程遠いかもしれません。でも、「我が子史上最高」を更新し続けていることは間違いありません。
その事実に気づければ、親の焦りは「喜び」に変わります。


世界にはバレなくてもいい。パパだけが見つけられる「3つの隠れ才能」

メディアやスカウトは、「球速」や「飛距離」といったわかりやすい数字で才能を測ります。
これが「世界にバレる」才能です。
しかし、親である私たちにしか見つけられない、数字に表れない「隠れ才能」があります。
これこそが、長い人生において、野球以上に子供を支える武器になります。

【準備の才能】玄関の靴を揃えた、道具を磨いた。その「丁寧さ」は球速より尊い

練習から帰ってきた息子を見てください。
泥だらけのスパイクを、自分でブラシをかけて磨いていませんか?
玄関の靴を揃えていませんか?

もしそうなら、それはとてつもない才能です。
「道具を大切にする心」「見えないところを整える力」は、仕事でも勉強でも、あらゆる分野で成功するための基礎です。
イチロー選手や大谷翔平選手が、誰よりも道具や環境を大切にすることは有名です。
技術はコーチが教えてくれますが、この「丁寧さ」は、家庭生活の中でしか育まれません。
球速が遅くても、この才能がある子は必ず伸びます。思いっきり褒めてあげてください。

【聞く才能】補欠でもベンチで声を出し、コーチの目を見て話を聞ける力

試合に出られず、ずっとベンチにいる我が子を見るのは辛いものです。
でも、そこで腐らずに、仲間のために声を出していませんか?
コーチが話をしている時、ちゃんと目を見て話を聞いていますか?

これは「素直さ」と「協調性」という才能です。
指導者のアドバイスを素直に吸収できる子は、今は下手でも、ある時期から急激に成長します。
逆に、どんなに才能があっても、聞く耳を持たない子はどこかで頭打ちになります。
「ベンチでの立ち振る舞いが素晴らしかったぞ!」
そう声をかけてあげられるのは、試合結果しか見ない他人ではなく、ずっと見守っている親だけです。

【切り替えの才能】エラーして泣いても、翌日グラウンドに行けた「小さな勇気」

大事な場面でエラーをした。三振をした。
その日は泣いて、落ち込んで、ご飯も食べられなかったかもしれません。
それでも翌朝、「行ってきます」と帽子を被ってグラウンドに向かったなら。

それは、WBCで優勝するよりも尊い、「失敗から立ち直る力(レジリエンス)」という才能です。
人生は失敗の連続です。失敗しないことより、失敗しても戻ってこられることの方が、生きていく上では何倍も重要です。
「昨日は辛かったのによく行ったな。パパはお前を尊敬するよ」
そんな言葉をかけてあげてください。その言葉が、子供の折れない心を育てます。


それでも「もっと上達させたい」と願うパパへ。正しいサポートの距離感

焦りは禁物ですが、子供が上手くなりたいと願うなら、親としてサポートしてあげたいのも事実です。
最後に、子供を潰さず、可能性を伸ばすための「正しい距離感」についてお話しします。

技術指導はプロ(コーチ)へ。親の役割は「最高の衣食住」と「送迎」のみ

未経験パパがやってはいけないのは、中途半端な技術指導です。
YouTubeで見聞きした知識で「肘を上げろ」「脇を締めろ」などと言うのは、混乱を招くだけです。
技術はチームの指導者に任せましょう。

親の役割は、「マネージャー」兼「スポンサー」です。

  • 栄養バランスの良い食事を用意する(体を作る)。
  • ぐっすり眠れる環境を整える(成長ホルモンを出す)。
  • 気持ちよく送り迎えをする(安心感を与える)。

これだけで十分、いや、これが最高のサポートです。
「教える」のではなく「支える」。この一線を守るだけで、子供はのびのびと野球に取り組めるようになります。

伊藤大海選手も実践?野球以外の「遊び」こそが運動神経を育てる逆説

RSSニュースで、WBC代表の伊藤大海選手らが「釣りに挑戦」している話題を見かけました。
一流選手ほど、野球以外の「遊び」や「趣味」を大切にしています。

実は、ゴールデンエイジ(神経系の発達期)と呼ばれる小学生時代には、野球以外の多様な動きを経験することが、運動神経の発達に極めて有効です。
木登り、鬼ごっこ、サッカー、水泳、そして釣り(集中力や指先の感覚)。
これらは全て、巡り巡って野球のパフォーマンスに繋がります。

「野球の練習しなさい!」と怒るより、休日に家族でキャンプに行ったり、違うスポーツで遊んだりすることが、結果的に「野球脳」や「身体操作性」を高めることになるのです。
「遊ぶことも練習のうち」。そう思えば、親の焦りも消えませんか?

長期視点を持とう。「世界にバレる」のは20歳を過ぎてからで遅くない

最後に、時間軸を長く持ちましょう。
少年野球は、長い野球人生のほんの「序章」に過ぎません。
プロ野球選手の経歴を見ても、小学校時代は無名だった選手、補欠だった選手は山ほどいます。

「世界にバレる」のが、12歳である必要はありません。
18歳でも、22歳でも、あるいは社会人になってからでもいいのです。
大切なのは、その時まで「野球を嫌いにならずに続けていること」です。

今、焦って無理をさせて野球を辞めさせてしまったら、その先の可能性はゼロになります。
「今は地中に根を張る時期。花が咲くのはまだ先」
そうドッシリ構えて、焦る気持ちをグッと飲み込み、笑顔で「いってらっしゃい」と送り出してあげてください。


まとめ:我が子の「一番のファン」に戻ろう。焦りは禁物、成長はマラソンだ

少年野球パパのためのメンタル防衛術まとめインフォグラフィック
他人のハイライトと比べず、我が子の隠れた才能を見つけるための3つのポイント

126キロのスーパー小学生も、WBCのスター選手も、確かに素晴らしい。
でも、あなたの家のリビングにいる、ユニフォームを泥だらけにして帰ってきたその子は、世界で唯一無二の、あなたにとっての最高の選手です。

ニュースを見て焦りそうになったら、思い出してください。

  • メディアは「他人のハイライト」しか映さない。
  • 比較するのは「昨日の我が子」だけ。
  • 親の仕事は「指導」ではなく「環境作り」と「メンタル防衛」。
  • 「隠れ才能(丁寧さ、素直さ、立ち直る力)」を見つけて褒める。

野球は9回裏まで何が起きるかわからないスポーツです。
人生も同じ。小学生の時点での勝ち負けなんて、試合開始直後の1回表みたいなものです。

焦らず、比べず、腐らず。
世界中の誰も気づいていなくても、あなただけは、お子さんの最大の理解者であり、一番のファンでいてあげてください。
パパが笑顔で見守ってくれる。それだけで、子供は勝手に強くなっていきます。

さあ、スマホを置いて。
「キャッチボールしようか!」と、声をかけてみませんか?
きっと、126キロの剛速球よりも温かいボールが、あなたのグラブに届くはずです。