試合でミスをした後、子どもが全力で走らなかったり、ベンチでふてくされたように見えたりしたとき、保護者はどう声をかければよいのでしょうか。
手がかりになるのが、2026年5月の西武・長谷川信哉選手の起用です。報道によると、長谷川選手は緩慢と受け取られた走塁で交代した翌日、先発に復帰しました。ただし、プロの選手起用と育成年代の指導は同じではありません。この記事では出来事を「罰の正当化」ではなく、行動を振り返った後に次の機会を用意する、という保護者向けのヒントとして考えます。
長谷川選手の交代と翌日の先発復帰から読み取れること
2026年5月28日のヤクルト戦で長谷川選手は本塁打を放った一方、走塁をめぐって途中交代となり、翌29日のDeNA戦では「5番・一塁」で先発したとスポーツ報知が報じました(出典:スポーツ報知)。
ここから確認できる事実は「交代の翌日に先発した」ことまでです。監督の内心や、先発復帰が教育目的だったかどうかは断定できません。それでも、育成年代の家庭で応用できる視点はあります。問題となった行動を一度区切り、人格への評価に広げず、次に望ましい行動を試す機会を残すことです。

「やる気がない」と決めつける前に確認したいこと
同じように見える態度でも、理由は一つとは限りません。悔しさで動けない、何をすべきか分からない、体調が悪い、痛みがある、指示を理解できていない、野球を続けること自体に迷いがある、といった可能性があります。行動だけから心理状態を診断することはできません。
| 見えた行動 | 最初に確かめること | 避けたい決めつけ |
|---|---|---|
| 全力で走らない | 痛み・息苦しさ・めまいはないか/状況を理解していたか | 「怠けている」 |
| 返事や声が小さい | 緊張しているか/話せるタイミングか | 「反省していない」 |
| 道具を乱暴に扱う | まず安全を確保し、落ち着いてから事実を確認 | 「性格が悪い」 |
| 笑っているように見える | 本人の言葉で気持ちを聞く | 「ふざけている」 |
危険な行動や他者を傷つける行動は、その場で止める必要があります。一方で、止めることと怒鳴ることは同じではありません。「バットは置こう。人に当たると危ない。落ち着いてから話そう」のように、行動・理由・次の手順を短く伝えます。
帰り道で使える「4段階」の声かけ
- クールダウン:試合直後に結論を迫らず、「お疲れさま。今は休もう」と伝える。
- 体調確認:「痛いところや気分の悪さはない?」と安全を先に確かめる。
- 事実と気持ちを分けて聞く:「あの走塁で何が起きた?」「そのとき、どんな気持ちだった?」と一問ずつ尋ねる。
- 次の行動を一つ決める:「次に同じ場面が来たら、最初の3歩を全力にする」など、本人が実行できる形にする。
言い換え例
| 避けたい言葉 | 言い換え例 |
|---|---|
| 「なんで走らなかったの?」 | 「あの場面で何が見えていた?」 |
| 「やる気がないなら辞めろ」 | 「今日は続けたい気持ちがある? 話せるときに聞かせて」 |
| 「みんなに迷惑をかけた」 | 「次にチームのためにできる行動を一つ考えよう」 |
| 「もっと厳しく叱ってください」 | 「チームではどう振り返りましたか。家庭で合わせる点はありますか」 |

指導者と連携するときの確認リスト
- 子どもの前で指導者を一方的に批判しない。
- 「何をしたか」「どのルールに照らした判断か」「次に何を期待するか」を具体的に確認する。
- 長時間の正座、人格否定、暴言、暴力、見せしめなどは「指導」で済ませない。
- 子どもが強い恐怖を訴える、睡眠や食欲に変化が続く、練習を極端に怖がる場合は、チーム外の相談先も検討する。
- 家庭では技術論を重ねず、休養・食事・睡眠と、本人が話せる環境を整える。
次の機会は「すぐ」でなくてもよい
翌日復帰というプロの事例を、すべての子どもに当てはめる必要はありません。気持ちや体調が整うまで時間が必要な子もいます。大切なのは、失敗をいつまでも人格評価として持ち越さず、「次は何を試すか」を本人と共有することです。
保護者の役割は、無条件に行動を許すことでも、罰を重ねることでもありません。安全とチームの約束を守りながら、子どもが状況を言葉にし、次の一歩を自分で選べるよう支えることです。
Q&A
Q. 本人が何も話したがらないときは?
その場で聞き出そうとせず、「今は話さなくて大丈夫。今日か明日、話せるときに聞かせて」と期限を緩く示します。体調や安全に関わることだけは先に確認してください。
Q. 同じ態度を繰り返すときは?
「反省が足りない」と罰を強める前に、目標が曖昧でないか、疲労や痛みがないか、本人が野球を続けたいかを確認します。「全力で」ではなく「打ったら一塁を駆け抜ける」のように観察できる行動を一つ決め、できたかを一緒に振り返ります。
Q. 交代はすべて悪い対応ですか?
いいえ。安全確保、ルールの確認、戦術上の判断など理由はさまざまです。問題は、交代を人格否定や長期的な見せしめに使うことです。判断の理由と復帰条件が本人に分かる形になっているかを確認しましょう。

