「やっと9人そろった。これでチームを残せる」——人数不足に悩むチームのパパなら、この知らせを自分のことのように喜びたくなるはずです。部員2人の危機を乗り越え、門真西高校が9人で4年ぶりの単独出場を果たしたことには、確かに大きな価値があります。
しかし、同校は2027年度入学者募集時から募集を停止し、2029年度末に閉校する予定です。つまり、閉校まで3年あるからといって、あと3回、新入生を迎えられるわけではありません。しかも9人は、単独出場できる人数であると同時に、誰か1人が欠ければ活動が揺らぐ最低人数でもあります。
私も息子の小学校、中学校で人数不足や合同チームを経験しました。そこで感じたのは、チームを支えるとは、無理に人数を埋めたり、親が子供の代わりに歴史を背負ったりすることではないということです。
期限が見えている組織で何を守り、何を次へ渡すのか。門真西の挑戦を美談だけで終わらせず、選手の健康と選択権、単独出場と連合の判断、保護者の実務と境界線、そして学校がなくなった後にも残せる野球の縁まで、一緒に考えてみましょう。
門真西の「9人」は復活のゴールではなく、期限付きチームの出発点
部員2人の危機から9人へ——4年ぶりの単独出場が持つ意味
部員が2人しかいない状態から9人をそろえ、単独で大会に出場する。これは簡単なことではありません。
勧誘の声をかけても、野球に興味を持つ子がいるとは限りません。興味を持っても、硬式野球の負担、学業との両立、費用、練習時間、経験差など、入部をためらう理由はいくつもあります。9人が同じユニホームで単独出場した事実は報じられています。ただし、そこに至る具体的な経緯や関係者の働きかけは、公表情報がない限り推測すべきではありません。
単独出場には、連合チームでは得にくい価値もあります。自分たちの学校名で試合に出て、校名の入ったユニホームを着て、主将や副主将といった役割を自分たちで担う。少人数だからこそ、一人ひとりが試合の当事者になれます。
ただし、ここで「9人そろったから復活した」と考えると、現実を見誤ります。9人は安定したチームの完成形ではなく、守備に必要な人数がそろった状態です。大会ごとに登録・出場条件があるため、規定上の条件を一律に断定はできません。勝つための選手層、けが人への備え、投手や捕手の代替、実戦形式の練習まで考えれば、チーム運営はここから始まります。
これは門真西だけの特殊な問題ではありません。日本高等学校野球連盟の2025年度 加盟校部員数調査結果によると、硬式野球部員は12万5381人で、前年から1650人減少。11年連続の減少となり、加盟校も前年比30校減の3768校でした。
「うちのチームだけが勧誘に失敗した」と考えるのではなく、競技人口と学校数が縮小する構造の中で、どのような活動規模なら続けられるのかを考える時代に入っています。
2027年度の募集停止と2029年度末の閉校を混同してはいけない
閉校予定のニュースを見ると、「2029年度末まで、まだ時間がある」と感じるかもしれません。しかし、野球部にとって重要なのは閉校日だけではありません。新しい選手を迎えられなくなる日です。
大阪府の令和7年度実施対象校に関する公式資料では、門真西高校は2027年度入学者募集時から募集停止となる予定が示されています。
募集停止後は、新入生が入ってきません。在校生が卒業するたびに、学校全体の人数も部員数も段階的に減ります。閉校まで校舎やグラウンドが残っていても、同じ条件で部員を募集し続けられるわけではないのです。
ここには、期限が二つあります。
一つは、学校が閉じる期限。もう一つは、新しい仲間を迎えられる期限です。野球部にとっては、後者のほうが早く、そして重くのしかかります。
少年野球や中学野球でも似たことがあります。「来年も大会には出られる」という見通しだけで安心していたら、卒団する6年生や3年生が抜けた後に人数が足りなくなる。新年度になって慌てて勧誘しても、子供たちはすでに別の競技や習い事を選んでいるかもしれません。
存続を考えるなら、大会日程からではなく、選手が減る時期と募集できる期間から逆算する必要があります。
9人ちょうどは「全員が主役」である一方、1人も欠けられない人数
9人のチームでは、控え選手はいません。ベンチにいる全員が先発であり、一人ひとりが必要不可欠です。これは選手にとって大きなやりがいになります。
打撃が得意ではなくても打席が回ってくる。守備に不安があっても、一つのポジションを任される。試合に出られないまま時間が過ぎる心配は少なく、実戦の中で成長できます。
一方で、9人ちょうどという人数は非常に脆弱です。発熱、けが、家庭事情、学校行事、進路準備。そのどれかで1人が参加できなくなれば、公式戦への出場そのものが難しくなる可能性があります。
「全員が主役」という言葉は魅力的ですが、言い換えれば「全員が休みにくい」ということでもあります。
だからこそ、9人そろった時点で確認したいのは、打順や守備位置だけではありません。
- 1人が休んだ日の練習をどうするか
- 投手と捕手の代役を誰が担えるか
- けが人を無理に出場させない基準があるか
- 公式戦に出られない場合も活動を続けるか
- 連合チームへ移る判断をいつ行うか
この設計がなければ、9人という喜びが、そのまま9人への重圧になってしまいます。

なぜ「最後の世代」という言葉は、子供を励ましながら追い詰めるのか
全員が必要とされる充実感と「自分が抜けたら終わる」という重圧
自分が必要とされている感覚は、子供を成長させます。少人数チームでは、経験の浅い選手にも役割が回りやすく、守備、打撃、用具準備、声かけなど、チームへの貢献を実感できます。
ところが、必要とされることと、責任を背負わされることは紙一重です。
「君がいないと試合ができない」
この言葉は、期待として届くこともあれば、逃げ道をふさぐ言葉になることもあります。まして「最後の世代」「学校の歴史を背負う世代」と呼ばれれば、本人の野球よりも、学校や大人の期待を優先しなければならないように感じるかもしれません。
大人にとっては誇らしい物語でも、子供にとっては毎日の部活動です。疲れる日もあれば、勉強を優先したい時期もあります。友人関係に悩むことも、競技への気持ちが変わることもあるでしょう。
「最後の世代」という物語の所有者は、大人ではなく選手です。大人が感動的な結末を先に決めてはいけません。
負傷を隠す、休めない、辞めたいと言えない——美談の裏にある危険
9人しかいないチームで、選手が足や肩に痛みを感じたとします。それでも「自分が休めば試合ができない」と考えれば、痛みを隠すかもしれません。
体調が悪くても参加する。進路のために勉強したくても練習を休めない。気持ちが離れていても、仲間への罪悪感から辞めたいと言い出せない。こうした状態を「責任感が強い」と評価してしまうのは危険です。
責任感は、選択できる余地があってこそ育ちます。休む権利も辞める権利もない場所で続けることは、責任感というより拘束に近くなります。
小さな痛みでも、親や指導者だけで「大丈夫」と判断せず、必要に応じて医療機関などの専門家につなぐことが大切です。専門家の見立てを親子で共有すれば、出場への思いだけに流されず、身体を守る判断ができます。
少人数チームほど、けがや体調不良への対応を本人の根性に委ねてはいけません。「今日は無理をしなくていい」と言える大人が必要です。
学校の歴史より、健康・学業・進路を優先してよいと大人が伝える
選手が自分から「健康や進路を優先してよい」と判断するのは、簡単ではありません。周囲が単独出場を喜び、最後の歴史を期待しているほど、自分だけ別の選択をすることに罪悪感を持ちます。
だからこそ、大人が先に言葉にする必要があります。
「学校の歴史を守るために、けがを我慢しなくていい」
「学業や進路を優先する時期があっていい」
「野球を続ける場所は、この学校だけではない」
これはチームを軽視する言葉ではありません。選手が安心して参加するための土台です。いつでも相談でき、休めて、別の道も選べる環境だからこそ、子供は自分の意思でグラウンドに立てます。
筆者の息子は、高校で硬式野球のレベルや環境とのギャップに直面し、最終的に野球部へ入らない選択をしました。それでも、地域の小学生のソフトボールを手伝い、試合観戦を楽しむ関係は続いています。
所属する部が変わっても、野球との縁まで消えるわけではありません。継続だけを唯一の成功にしないことが、子供の長い野球人生を守ります。
「9人そろえば単独が正解」とは限らない——連合チームとの判断軸
単独出場で守れる校名、ユニホーム、主将経験、全員の試合機会
単独出場には、数字では測れない価値があります。
自分の学校の校名で大会に出ること。受け継がれてきたユニホームを着ること。校歌や応援を背に、自分たちのチームとして戦うこと。閉校が決まっている学校なら、その意味はさらに大きくなります。
少人数であれば、全員に試合機会が生まれやすく、主将、投手、捕手、内野、外野といった重要な役割を経験できます。人数の多い強豪校ではベンチ入りできなかったかもしれない選手が、試合の中心で判断する機会を得られます。
単独出場を選ぶことは、単なる形式へのこだわりではありません。「自分たちの学校で野球をした」という所属感を守る選択になり得ます。
ただし、その価値を守るために選手の安全や選択権を削ってしまえば、本末転倒です。校名を残すために子供がいるのではなく、子供が野球をするためにチームがあります。
連合で得られる安全性、練習の質、投手・捕手の負担分散
連合チームには、「単独で出られなかった学校の救済」という消極的な印象があるかもしれません。しかし、人数が増えることで得られるものは少なくありません。
実戦形式の練習がしやすくなり、守備連係や走塁練習の質が上がります。複数の投手と捕手を育てられれば、特定の選手に負担が集中するのを防げます。体調不良やけががあっても、無理に出場させずに済みます。
他校の選手と関わることで、新しい練習方法や考え方にも触れられます。筆者の息子も中学校で合同チームを経験しました。年度ごとに構成が変わる不安定さはあったものの、他校の子との関わりやコミュニケーションの経験につながりました。
一方で、合同練習には移動が伴います。練習場所、集合時間、送迎、用具の管理、指導方針の調整も必要です。選手が増えれば、必ず全員の出場機会が増えるとも限りません。
大切なのは、単独を「成功」、連合を「失敗」と決めつけないことです。どちらにも守れるものと失うものがあります。
安全・成長・試合機会・本人の希望の順で、学期ごとに判断する
単独か連合かを判断するとき、最初に置きたいのは安全です。
9人で出場できるかではなく、選手が無理をせず活動できるか。投手や捕手に負担が偏っていないか。けが人が出ても、出場を強制しない運用ができるか。この条件を満たさなければ、形式を守る意味は薄れます。
次に考えるのが成長です。十分な練習ができるか、複数ポジションを経験できるか、指導を受けられるか。同時に、本人たちが何を望み、何を不安に感じているかを確認します。
本人の希望は、最後に付け足す項目ではありません。安全性や実現可能性を大人が整理し、選手が納得して選べるよう一緒に考える中心的な判断材料です。
判断を大会直前まで先送りすると、「もう申し込み期限だから」「他に方法がないから」という理由で結論が決まります。そこで、学期ごとに判断日を設けるのがおすすめです。
- 現在の在籍人数と出席状況
- 投手・捕手の人数と身体的負担
- けがや体調不良の状況
- 合同練習が可能な候補校
- 移動手段と保護者負担
- 選手本人の希望
これらを定期的に確認し、必要なら匿名アンケートも使う。結論だけでなく、誰が何を根拠に決めたのかを透明にすることが大切です。
人数を埋める勧誘から、期限を隠さない「合意形成」へ
「試合に出られる」だけで誘うと、入学後の現実とのズレが生まれる
少人数チームの勧誘では、「すぐ試合に出られるよ」という言葉が使われがちです。確かに、出場機会は大きな魅力です。
しかし、閉校や募集停止が決まっている学校で、その魅力だけを前面に出すのは十分ではありません。入部後に人数が減り、単独出場できなくなる可能性があります。連合チームになれば練習場所や移動時間が変わるかもしれません。指導者の異動、施設の整理、部費や用具の扱いも不確実になります。
都合の悪い情報を小さく見せて人数を集めれば、入学後に「聞いていた話と違う」という不信感が生まれます。
必要なのは勧誘というより、合意形成です。
募集停止の時期、閉校予定、現在の学年別人数、単独出場できなくなった場合の案を最初から伝える。そのうえで、少人数だから得られる複数ポジション、試合経験、チーム運営、地域交流などの機会を具体的に示します。
不確実性を知ったうえで参加を選んだ選手は、「人数合わせ」ではありません。期限のある環境で何を経験したいかを、自分で選んだ仲間です。
進路選択で確認したい8項目——学年別人数から備品の行き先まで
閉校予定校や少人数校を進路候補にする場合、現在の部員数だけを聞いても、将来の活動は見えません。中学生と保護者は、少なくとも次の8項目を確認しておきたいところです。
1. 学年別の選手数とマネジャー数 2. 翌年度以降も生徒募集が行われるか 3. 9人を割った場合の連合候補校 4. 合同練習の場所、頻度、移動手段 5. 監督や顧問など指導者の継続見込み 6. けが人や欠席者が出た場合の練習・試合方針 7. グラウンド、用具、部費をいつまで利用できるか 8. 卒業・閉校後に記録や備品を誰が引き継ぐか
すべてに確定した答えがあるとは限りません。大切なのは、不確実な点を学校側が不確実だと説明してくれるか、その場合の代替案を考えているかです。
「何とかなると思います」という答えだけでは、子供の3年間を預ける判断材料として足りません。反対に、「この時点で連合を検討する」「この施設はこの年度まで使用できる」といった条件が共有されていれば、家庭でも現実的に検討できます。
少人数校を避けるべきだという話ではありません。人数が少ないからこそ得られる濃い経験もあります。ただし、出場機会だけでなく、卒業まで活動できる見通しを確認して選ぶ必要があります。
体験会を入学者募集だけで終わらせず、地域に野球の入口を残す
閉校予定の学校が小中学生向けの体験会を開いても、将来の入学者を長期的に増やすことはできません。そこで「募集につながらないから意味がない」と考えるのは早計です。
高校生が小学生にボールの握り方を教える。ティーバッティングを手伝う。中学生と一緒に守備練習をする。こうした活動は、入部者を増やすだけでなく、地域に野球への入口を残します。
教える側の高校生にも価値があります。自分が身につけた技術を言葉にし、年下の子に合わせて伝える経験は、試合の勝敗とは異なる達成感を生みます。「最後の世代」の役割を、校名を守ることだけに限定せず、野球の面白さを次の世代へ渡すことに広げられます。
体験会の成功を「何人が入学したか」だけで測らないことです。
- 初めて野球に触れた子が何人いたか
- 高校生が教える役割を経験できたか
- 少年団や中学校とのつながりが生まれたか
- 閉校後も続けられる地域行事になったか
こうした指標を持てば、学校がなくなった後にも活動の成果が残ります。

少人数チームでパパが担う実務と、越えてはいけない境界線
送迎・補食・用具・記録——まず仕事を一覧化して偏りを見える化する
少人数チームでは、選手だけでなく保護者も少人数です。それでも大会運営や日々の活動に必要な仕事が、人数に合わせて減るとは限りません。
送迎、補食、飲料、用具運搬、グラウンド整備、写真や動画の記録、会計、連絡、広報、体験会の準備。誰かが気づいて黙って引き受けていると、外からは負担が見えません。
最初に必要なのは、善意を求めることではなく、仕事を一覧化することです。
それぞれの作業について、頻度、所要時間、必要人数、責任者、代替方法を書き出します。毎回現地にいなければできない仕事なのか、自宅でもできるのか、学校側が担えるのかも分けます。
負担が見えるようになると、「いつも来られる家庭が全部やる」という構造を見直せます。仕事、介護、きょうだいの予定など、各家庭には異なる事情があります。協力できないのではなく、協力できる時間と方法が違うのです。
必須負担と任意協力を分け、親の参加量を子供の評価に結びつけない
保護者の仕事を一覧化したら、次は「必須」と「任意」を分けます。
必須負担は、安全や活動成立のため、各家庭に事前の合意を求めるものです。任意協力は、可能な家庭が無理のない範囲で行うものです。この二つを曖昧にすると、「任意と言いながら断れない」空気が生まれます。
特に守らなければならないのは、親の協力量を子供の評価につなげない原則です。
送迎に多く参加した家庭の子が優先される。保護者会の役職を引き受けない家庭が居づらくなる。寄付額の違いが、選手や家庭への態度に影響する。こうした状態になれば、野球ではなく家庭の資源で所属感が決まってしまいます。
親の支援は大切です。しかし、子供が野球をする権利と、親がどれだけ運営に参加できるかは分けて考える必要があります。
未経験パパは、技術指導ができないことに引け目を感じるかもしれません。私自身も、野球経験がない状態から関わり始めました。だからといって、無理にコーチの役割まで背負う必要はありません。
安全を確認する。負担の偏りに気づく。記録を残す。子供の気持ちを聞く。技術ではない場所にも、親ができる大切な仕事があります。
会計、寄付、寄贈品、閉校時の残金処理を「善意」で曖昧にしない
「最後のチームだから、できる人が出そう」
その善意はありがたいものです。しかし、お金や物品の扱いを善意だけで進めると、後から問題が起きます。
遠征費、用具購入費、寄付金、OBからの支援、保護者会費。学校の会計と保護者会の会計は分け、目的、決裁者、領収書、残高を記録する必要があります。
閉校予定校では、残金や寄贈品の行き先も先に決めておきたいところです。
- 残金は在籍家庭へ返すのか
- 学校へ寄付するのか
- 地域の少年団へ渡すのか
- バットやボールは誰の所有物か
- ユニホームや部旗は学校、OB会、地域施設のどこへ残すのか
- 寄贈者の意向をどう確認するのか
閉校直前になると、卒業、進路、行事が重なり、落ち着いて協議する時間がありません。「最後に決めればいい」ではなく、お金や物が集まった時点で終了時の扱いまで明文化しておくべきです。
透明性は、疑うための仕組みではありません。善意で動いた人を、後の疑念や責任から守る仕組みです。
部を残すのではなく、野球を続けられる「受け皿」を残す
校名や組織が消えても、選手・人間関係・指導の知恵は渡せる
閉校すれば、学校名を冠した野球部はなくなります。それは避けられない現実です。
しかし、野球部が残らないことと、そこで育ったものがすべて消えることは同じではありません。
選手は卒業後も野球を続けられます。仲間との関係も残ります。指導者が積み上げた練習方法、少人数で工夫したメニュー、地域との交流、保護者会の運営記録も次へ渡せます。
ここで考えたいのは、「部を最後まで残すこと」と「選手が野球を続けられること」は別の目標だということです。
単独チームという形だけに固執すれば、閉校と同時に人間関係も活動も途切れる可能性があります。反対に、早い段階から近隣校や地域クラブとつながっていれば、学校がなくなった後にも練習場所や仲間が残ります。
組織の存続には期限があっても、野球との関わり方には期限を設ける必要はありません。
近隣校、地域クラブ、少年団、OBを閉校直前ではなく今からつなぐ
受け皿づくりは、部員が8人になってから始めるものではありません。
近隣校とは、合同練習や練習試合を通じて、指導方針や移動距離を確認できます。地域クラブとは、卒業後の活動や施設利用について情報交換できます。少年団との交流は、競技の入口を地域に残します。OBには、記録保存、用具の引き継ぎ、行事支援などで協力を求められるかもしれません。
ただし、すべてを保護者が背負う必要はありません。学校、指導者、行政、地域団体の役割を整理し、誰が窓口になるかを決めます。
連携先を探すときは、名前だけの協定ではなく、具体的な動きを確認したいところです。
- 合同練習を年に何回行うか
- 連合移行を検討する人数と時期
- 移動費や送迎を誰が負担するか
- 指導中のけがや事故にどう対応するか
- 閉校後も交流を継続できるか
- 選手本人が望まない参加を強制しないか
つながりは、困ったときだけ助けてもらうためのものではありません。普段から顔が見える関係をつくっておくことで、環境が変わるときの心理的な段差を小さくできます。
筆者は、公園で球技ができなくなった際、中学校や地域に相談し、団体としてグラウンドを借りる形を整えた経験があります。最初は親子2人でも、地域の経験者や小学生などが加わりました。
環境は、最初から用意されているものだけではありません。人をつなぎ、役割を整理すれば、新しくつくることもできます。
戦績・写真・部旗・練習メニューを収める「継承箱」の作り方
閉校までに残したいものを、一つの「継承箱」として整理する方法があります。実際の箱だけでなく、デジタルデータを含む記録のまとまりです。
収めたいものとして、次のような資料が考えられます。
- 年度ごとの部員名簿と戦績
- 大会のスコアや新聞記事
- 集合写真や試合動画
- 選手、指導者、保護者の言葉
- 少人数で工夫した練習メニュー
- ユニホーム、部旗、記念品
- 用具と寄贈品の一覧
- 保護者会の会計記録と運営手順
- 近隣校、地域クラブ、少年団、OBの連絡先
- データの保存場所と管理者
写真や動画には個人情報が含まれるため、公開範囲と保存期間を決め、本人や家庭の同意を確認します。名簿や連絡先も、誰でも閲覧できる状態にしてはいけません。
大切なのは、物を集めることだけではなく、誰へ渡すかを決めることです。学校の資料室、地域施設、OB会、後継となる団体など、管理を引き受けられる相手と事前に合意します。
「最後の世代に何を残してもらうか」ではなく、「大人は最後の世代の経験をどう丁寧に受け取るか」と考える。その姿勢が、選手を歴史の重荷から解放し、経験を地域の財産へ変えてくれます。

まとめ
守るべきは「9人」という形ではなく、一人ひとりの健康と選択権
門真西高校が部員2人の危機から9人をそろえ、4年ぶりの単独出場を果たしたことには大きな意味があります。ただし、9人は復活の完成形ではありません。全員が主役になれる一方で、誰か1人が欠ければ活動が揺らぐ人数です。
さらに、2029年度末の閉校より前に、2027年度入学者募集時から募集停止となる予定です。「閉校まで何年あるか」だけではなく、「いつまで新しい仲間を迎えられるか」を見なければなりません。
最後の世代に、勝利、皆勤、部員勧誘、広報、歴史の継承まで背負わせる必要はありません。
学校の歴史より、選手の健康、学業、進路が優先です。痛みがあれば休んでよい。気持ちが変われば相談してよい。連合チームや別の競技環境を選んでもよい。その選択権を守ることが、大人の最優先の仕事です。
パパの支援は、負担の透明化と閉校後の人間関係づくりまで
少人数チームでは、保護者の支援が必要になりやすいのは事実です。送迎、補食、用具、記録、会計など、誰かが担わなければ活動は回りません。
だからこそ、仕事を一覧化し、必須負担と任意協力を分けます。親の参加量を子供の評価に結びつけず、参加できない家庭の子が不利益を受けない原則を共有します。
寄付や会計、閉校時の残金や寄贈品も、「最後だから」という善意だけで曖昧にしてはいけません。目的、決裁、記録、終了時の扱いまで明文化することが、協力した人を守ります。
そして、パパの支援は単独チームを無理に維持するところで終わりません。近隣校、地域クラブ、少年団、OBとつながり、学校がなくなった後にも選手が野球を続けられる受け皿をつくる。そこまで視野を広げれば、閉校は野球との別れではなく、関わり方を次へ渡す節目になります。
今週できる一歩——親子で「何を残したい?」と話してみよう
今週、親子で一つだけ話してみてください。
「このチームで、何を残したい?」
勝利、単独出場、校名、写真、仲間、技術、楽しかった記憶。答えは一つでなくて構いません。親と子で違っても構いません。
大切なのは、親が先に理想の最終章を決めないことです。子供が何を大切にし、何を重荷に感じ、どこまで続けたいと思っているのかを聞くことから始めます。
チームの形は、いつか変わります。学校が閉じることもあれば、卒団や進学で仲間が離れることもあります。それでも、一緒に悩み、選び、次の居場所を探した経験は残ります。
守るべきものは「9人」という数字ではありません。
一人ひとりが無理をせず、自分で選び、野球を好きな形で続けられること。そのための人間関係と環境を残すことが、最後の世代に寄り添うパパの役割ではないでしょうか。
