野球未経験パパの逆転手!ライオンズJr.流「考える力」で息子を伸ばす座学トレーニング
「パパ、やったことないくせに言わないでよ!」
日曜日の夕方、車の中で息子にそう言われて、言葉に詰まってしまったことはありませんか?
あるいは、良かれと思ってYouTubeで見つけた「最新の打撃理論」を教えたら、「コーチと言ってることが違う!」と混乱させてしまったことは?
正直に告白します。これはすべて、かつての私の失敗談です。
私たち「野球未経験パパ」にとって、子供への技術指導はまさに地雷原。愛情があればあるほど、空回りして信頼を失ってしまう……そんな苦い経験を持つお父さんは、私だけではないはずです。
しかし、諦める必要はありません。今、少年野球の世界で「ある革命」が起きています。
それは、技術や身体能力以上に、「考える力(思考力)」が評価される時代の到来です。
「球速120kmを投げられても、セレクションで落ちる子がいる」
これは決して脅し文句ではありません。あの埼玉西武ライオンズジュニアが、選考試験に「筆記試験」と「面接」を導入したことをご存知でしょうか?彼らが求めているのは、ただ野球が上手い子ではなく、野球を言語化できる「獅考力(しこうりょく)」を持つ子なのです。
これは、私たち未経験パパにとって最大のチャンスです。
技術は教えられなくても、「考える力」なら、家庭での会話や座学でいくらでも伸ばすことができるからです。グラウンドでノックは打てなくても、リビングで最高のコーチになることはできるのです。
この記事では、衝撃的なライオンズJr.のニュースを皮切りに、未経験パパだからこそできる「座学トレーニング」の具体的な方法を徹底解説します。YouTubeの受け売りで失敗するのはもう終わり。今日から、息子さんと一緒に「頭脳」を鍛える新しい野球ライフを始めましょう。
※AI生成による音声コンテンツにて、発音や読み方に違和感ございますが、ご了承ねがいます。
衝撃のニュース!120km投げても受からない「ライオンズJr.」の新常識
2024年の年末、少年野球界を駆け巡ったあるニュースが、多くの指導者と保護者に衝撃を与えました。それは、NPB12球団ジュニアトーナメントに出場する「埼玉西武ライオンズジュニア」の選考基準に関するものです。
史上初?セレクションに「筆記試験」と「面接」導入の背景
これまで、プロ野球のジュニアチームのセレクション(選考会)といえば、遠投の距離、50m走のタイム、バッティングの飛距離、ピッチングの球速といった「目に見える数値(フィジカルデータ)」が絶対的な基準だと信じられてきました。
もちろん、今でもそれらが重要であることに変わりはありません。しかし、ライオンズアカデミーはそこに新たな、そして決定的な選考プロセスを加えました。
それが、「筆記試験」と「面接」です。
想像してみてください。ユニフォームを着た小学生たちが、机に向かってペンを走らせている姿を。「野球の試験」なのに、です。
報道によると、この筆記試験では「野球のルール理解」だけでなく、「ノーアウト一塁で、君がバッターなら何を考えるか?」といった、状況判断や戦術理解を問う問題が出題されたといいます。
これは何を意味しているのでしょうか?
単に「勉強ができる子」を求めているわけではありません。アカデミーの責任者はメディアの取材に対し、「身体能力が高くても、教えても理解できない、あるいは自分で考えて動けない選手は、短期決戦のジュニアトーナメントでは勝てないし、将来プロになっても伸び悩む」という趣旨の発言をしています。
つまり、「言われた通りに動くロボット」ではなく、「自分の頭で考えて判断できる選手」へと、プロ側の求める人材像が明確にシフトしているのです。
[引用・参考] 【全選手紹介】メンバー選考に面接&筆記試験も 悲願の初Vへ…ライオンズJr.が掲げる「獅考力」(Full-Count)
プロが喉から手が出るほど欲しい「獅考力(しこうりょく)」とは?
ライオンズジュニアが掲げるスローガン、それが「獅考力(しこうりょく)」です。
ライオンズの「獅子」と「思考力」を掛け合わせたこの言葉には、現代野球に必要なエッセンスが凝縮されています。
では、具体的に「獅考力」とは何でしょうか?私は以下の3つの要素だと分析しています。
- 状況把握能力:
今、アウトカウントはいくつか?点差は何点か?相手の守備位置はどこか?といった情報を瞬時にインプットする力。 - 予測と判断力:
「次は変化球が来そうだ」「ここにゴロが来たらセカンドに投げよう」と、未来を予測し、準備する力。 - 言語化能力:
なぜそのプレーを選んだのか?なぜ失敗したのか?を、自分の言葉で説明できる力。
特に3つ目の「言語化能力」は、面接試験で徹底的に見られたポイントだそうです。
「なんとなく打ちました」「たまたま捕れました」では、再現性がありません。成功も失敗も論理的に説明できて初めて、選手は次のステップへ成長できる。プロのスカウトや指導者は、小学生の段階からこの「PDCAを回す能力」の萌芽を探しているのです。
技術偏重はもう古い?「身体能力」と「脳」の両輪が必要な理由
誤解してはいけないのは、「技術や体力は不要」ということではありません。120kmの速球を投げる身体能力は、間違いなく素晴らしい才能です。
しかし、これまでの少年野球では、この「身体能力」があまりにも過大評価され、「脳(思考力)」が軽視されてきた傾向があります。
「つべこべ言わずに走れ!」
「監督の言う通りに打て!」
そんな指導の下で育った「指示待ち人間」は、高校野球やその先のレベルに行くと、壁にぶつかります。なぜなら、レベルが上がれば上がるほど、相手も同じくらいの身体能力を持っているからです。自分と同じくらい速い球を投げ、同じくらい遠くへ飛ばすライバルと戦う時、最後に勝敗を分けるのは「準備の差」であり「読みの差」、つまり「脳の差」なのです。
「120km投げても落選する」というニュースは、身体能力という片方の車輪だけを巨大化させてきた親子への、強烈な警鐘と言えるでしょう。
そして同時に、これは私たち未経験パパにとっての「福音」でもあります。なぜなら、身体能力は遺伝や成長の個人差が大きいですが、思考力はトレーニング次第で誰でも、今日からでも伸ばすことができるからです。
【あるある】「YouTube受け売りおじさん」になっていませんか?未経験パパの失敗学
ここで少し、視点を私たち「パパ」に戻しましょう。
「思考力が大事なのはわかった。でも、やっぱりヒットを打たせてあげたいし、もっと上手くしてあげたい」
そう思うのは親心として当然です。
そして、その親心が暴走した結果、陥りやすいのが「YouTube受け売りおじさん」という悲しきモンスター化です。

「動画で見た理論」を子供に押し付ける危険性
現代は素晴らしい時代です。YouTubeを開けば、元プロ野球選手や有名トレーナーが、無料で高度な技術指導をしてくれます。「ホーライスイング」「キレダス」「縦振り」「壁を作る」……魅力的なキーワードが次々と飛び込んできます。
私自身、息子が少年野球を始めた当初、毎晩のようにこれらの動画を貪るように見ていました。そして、仕入れたばかりの知識を、週末のグラウンドや公園で息子に披露していました。
「昨日の動画で見たんだけどさ、もっと肘をこうやって……」
「今のスイングじゃダメだ。プロの〇〇選手はこうやってるぞ」
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
プロが発信している理論は、あくまで「そのプロ選手にとっての正解」であり、あるいは「ある程度基礎ができている選手向けの応用編」であることが多いのです。
まだ体の使い方も定まっていない、筋肉も未発達な小学生に、プロの完成されたフォームを部分的にマネさせようとすると、どうなるでしょうか?
多くの場合、フォームのバランスを崩します。
「肘を上げろ」と言いすぎて肩に力が入ったり、「腰を回せ」と言いすぎて体が開いたり。良かれと思って教えたことが、逆効果になってしまうのです。
「上から叩け」vs「縦振り」の矛盾に子供はパニック
さらに悪いことに、野球界には正反対の理論が存在します。
昔ながらのチーム指導者は「ゴロを打て!ボールを上から叩け!」と教えることが多いです。一方、YouTubeの最新理論では「フライボール革命だ!ボールの軌道に入れて縦に振れ(アッパースイング気味)」と推奨されていたりします。
この矛盾に挟まれた子供の心境を想像してみてください。
- チームの監督: 「おい!なんで上げてるんだ!上から叩けって言っただろ!」
- パパ(YouTube派): 「監督は古いんだよ。今は縦振りが常識だから、もっと下から……」
子供は大混乱です。「どっちの言うことを聞けばいいの?」。
結果、プレーに迷いが生じ、思い切りの良さが消え、スランプに陥ります。そして最悪の場合、「もうパパも監督もうるさい!野球つまんない!」となってしまうのです。
「パパ、やったことないくせに」という無言の圧力
そして訪れる、決定的な瞬間。
私が今でも忘れられない、息子とのやり取りがあります。
バッティングセンターで、なかなか当たらない息子に私が熱心にアドバイスをしていた時です。
「だから、タイミングだって。もっと足をこう……」
私が身振り手振りで教えようとしたその時、息子がボソッと言いました。
「……パパ、野球やったことないじゃん」
その場が凍りつきました。
「いや、パパは勉強してるから……」と言い返そうとしましたが、言葉になりませんでした。
息子の目は、「自分で打ったこともないのに、なんでそんなに偉そうなの?」と語っていました。
残酷ですが、これが現実です。
キャッチボールですら暴投するようなパパが、いくら口で立派な理論を語っても、子供には響きません。むしろ、「できないくせに口出しするな」という不信感を生むだけです。
この「信頼残高」がゼロになってしまうと、その後どんなに正しいことを言っても、子供は耳を貸さなくなります。これは親子関係において、非常に危険な状態です。
もし、あなたが今、「最近、野球の話をすると子供が黙るな……」と感じているなら、それは「YouTube受け売りおじさん」化の黄色信号かもしれません。
技術指導はプロに任せろ!パパの役割は「翻訳」と「問いかけ」
では、未経験パパは何も言わずに黙って見ていればいいのでしょうか?
いいえ、違います。関わり方を変えればいいのです。
「技術を教える(ティーチング)」ことは、潔く諦めましょう。
それは監督やコーチ、あるいはプロのスクールに任せるべき領域です。彼らはその道のプロであり、子供に教える経験値も段違いです。
その代わり、私たち未経験パパが担うべき役割は2つあります。
- 翻訳者(トランスレーター):
監督の言う「もっと腰を入れろ」という抽象的な指示が子供に伝わっていない時、「それって、コマみたいに回る感じかな?それともドアを開ける感じかな?」と一緒に噛み砕いて考える役割。 - 問いかけ役(インタビュアー):
「こうしろ」と答えを与えるのではなく、「さっきの打席、自分ではどう振ろうと思ったの?」と問いかけ、子供の考えを引き出す役割。
これなら、野球経験は関係ありません。むしろ、素人だからこそ「え、今のってどういう意味?詳しく教えて!」と子供に教えを請うスタンスが取れます。
これが、次章で解説する「獅考力」を育てるための土台となるのです。
技術ゼロでも勝てる!未経験パパこそが「思考力」最強のコーチになれる理由
「技術指導を諦める」というのは、決してネガティブな撤退ではありません。
むしろ、未経験パパだからこそ持っている「最強の武器」を使うための戦略的転換です。
その武器とは何か?
それは、あなたが日々、社会人として仕事で培ってきた「ビジネス思考(論理的思考力)」です。
野球は「準備」と「確率」のスポーツ。ビジネス思考との共通点
野球というスポーツは、実は非常にビジネスに似ています。
サッカーやバスケットボールのように常にプレーが流れているわけではなく、投手が投げるまでには「間」があります。この数秒〜数十秒の「間」に、どれだけ情報を整理し、次の予測を立てられるかが勝負を決めるスポーツです。
- 現状分析: ノーアウト満塁、1点差、バッターは4番。
- リスク管理: ここで最悪なのはダブルプレー。三振ならまだマシ。
- 予測: 相手ピッチャーは追い込まれたら外角のスライダーが多い。
- 意思決定: だから、初球のストレートを狙って外野フライを打ちに行こう。
この思考プロセスは、私たちが仕事でやっている「PDCAサイクル」や「リスクマネジメント」そのものではないでしょうか?
技術的な「どうやってバットを振るか」はわからなくても、状況的な「今、何を優先すべき場面か(KPIは何か)」なら、未経験パパでも十分に理解し、アドバイスできるはずです。
むしろ、長年野球をやってきた経験者パパほど、「感覚」や「セオリー」に頼ってしまい、論理的な説明を省いてしまうことがあります。
「そこは気合でいけ!」「野球とはそういうものだ!」と。
対して、未経験パパは「なぜ?」を論理的に分解しないと理解できないため、結果的に子供に対しても「なぜそのプレーが必要なのか」を論理的に説明できるポテンシャルを秘めています。
「教える」のではなく「気づかせる」。コーチング視点の導入
ビジネスの世界でも、部下指導のトレンドは「一方的に教える(ティーチング)」から「問いかけて引き出す(コーチング)」へ変わってきています。これをそのまま少年野球に応用しましょう。
技術がない私たちは、そもそも「教える(答えを与える)」ことができません。
だからこそ、「どう思う?」「どうしたい?」と聞くしかありません。
しかし、これこそが、ライオンズJr.が求めている「獅考力」を育てるための最良のアプローチなのです。
答えを教えられた子供は、その場では正解できても、応用が効きません。
一方、問いかけられて自分で答えを出した子供は、脳に汗をかいています。思考回路が鍛えられています。
「パパは野球わかんないから教えてよ。なんであそこで盗塁したの?」
こう聞かれた子供は、必死に言語化しようとします。
「えっとね、ピッチャーが牽制球を投げた後、セットポジションに入るのが遅かったから……」
ここまで言えれば大したものです。もし言えなければ、「なんとなく」走っただけだということに自分で気づけます。
未経験パパの武器は、バットでもグローブでもなく、「問いかけ」です。
これなら、肩が痛くても、腰痛持ちでも、今日からすぐに実践できます。
では、次章からはいよいよ、家庭で具体的にどうやって「獅考力」を鍛えていくか、3つのトレーニング方法を紹介していきます。
今日からできる「獅考力」トレーニング①:プロ野球観戦での「予測クイズ」
最も手軽で、かつ効果絶大(しかも楽しい!)トレーニングがこれです。
夕食後、リビングでビールでも飲みながら、お子さんと一緒にプロ野球中継を見てください。ただし、ただ漫然と見てはいけません。
「次、ピッチャーは何を投げる?」ゲームを開催しましょう。
漫然と見るな!「次、ピッチャーは何を投げる?」ゲーム
ルールは簡単です。1球ごとに、次の球種とコースを予想し合うだけです。
- パパ:「ツーナッシング(2ストライク0ボール)だから、次は外角にボール球のフォークで空振りを取りに来ると思うな」
- 息子:「うーん、でもこのバッターはフォークを待ってる気がするから、裏をかいてインコースの真っ直ぐじゃない?」
そして結果を見ます。
「あー!フォークだった!パパの勝ち!」「おー、真っ直ぐで見逃し三振か!すげー!」
このゲームの肝は、予想が当たったか外れたかではありません。
「なぜそう思ったか」という根拠(仮説)を口に出させることです。
最初は「なんとなく」で構いません。
しかし、慣れてくると子供は画面の中の情報を必死に探すようになります。
「キャッチャーがさっきから外ばっかり構えてる」
「ピッチャーが首を振ったから、自信のあるボールかな」
「バッターがすごい短く持ってるから、変化球狙いかも」
これぞまさに、「観察」→「推論」→「予測」という思考プロセスです。
これを毎晩のリビングで繰り返している子は、実際の試合でも打席に入った時、「ただボールを待つ」のではなく「相手の配球を読む」ことができるようになります。
解説者の言葉を「疑う」視点を持たせる
もう一つ、おすすめのテクニックがあります。それは、テレビの解説者(元プロ選手)の言葉をあえて「疑う」あるいは「検証する」ことです。
解説者が「ここはバントの場面ですね」と言ったとします。
すかさずパパが問いかけます。
「解説の人はバントって言ってるけど、〇〇君ならどうする?本当にバントが正解かな?」
息子:「うーん、でもこのバッターは足が速いから、転がせばセーフになるかも。だからバントじゃなくてセーフティバントがいいかも」
パパ:「なるほど!その視点は面白いね!」
これは「権威(偉い人の言うこと)を鵜呑みにせず、自分の頭で考える」トレーニングです。
少年野球の現場では、監督やコーチの指示が絶対になりがちです。しかし、将来活躍する選手は、指示を理解した上で、瞬時の判断でより良い選択(例えば、バントのサインだけど相手がチャージしてきたからヒッティングに変えるなど)ができる選手です。
テレビの前なら、どんなに偉そうなことを言っても怒られません。
親子で解説者にツッコミを入れながら、「自分ならどうするか」を常にシミュレーションする癖をつけましょう。これなら未経験パパでも対等に渡り合えますし、何より親子の会話が弾んで楽しいですよ。
今日からできる「獅考力」トレーニング②:言語化能力を磨く「野球ノート」の書き方
ライオンズJr.の選考でも重視された「言語化能力」。これを鍛える最強のツールが「野球ノート」です。
多くのチームで推奨されていますが、ただの日記になってしまっているケースがほとんどです。
「今日は〇〇グラウンドで練習しました。ノックを頑張りました。楽しかったです。次はエラーしないようにしたいです。」
これでは思考力は伸びません。
未経験パパの出番です。あなたのビジネススキルを活かして、このノートを「成長のためのデータベース」に進化させましょう。
「楽しかった・頑張った」は禁止!事実と感想を分ける
ビジネス報告書の基本、「事実」と「解釈(感想)」を分けることを教えましょう。
子供のノートはこれが混ざりがちです。
- ×悪い例:「今日は調子が悪くて打てなかった」
- ○良い例(事実):「3打席立って、3回とも空振り三振だった。相手投手は自分より背が高かった」
- ○良い例(解釈):「調子が悪いというより、高めの速い球に振り遅れていたと思う」
まず「何が起きたか(Fact)」を正確に書かせます。数字(打率、球数、点差)を入れるとなお良いです。
その上で、「なぜそうなったか(Analysis)」を書くフォーマットを提案してあげてください。
失敗を「財産」に変える振り返りのフレームワーク
失敗した時こそ、ノートの出番です。
ビジネスで言う「なぜなぜ分析」です。
エラーをしたなら、その原因を以下の3つに分類させてみましょう。
- 準備不足: グローブの手入れを忘れた、靴紐が解けていた、体調が悪かった。
- 判断ミス: 前進守備をするべき場面で後ろにいた、投げるベースを間違えた。
- 技術不足: バウンドが合わせられなかった、送球が逸れた。
子供は全てを「僕が下手だからだ」と技術不足のせいにしがちです。
しかし、パパが横から「これって、技術の問題かな?それとも、打つ前に一歩前に出ていれば捕れたんじゃない?」と判断ミス(準備不足)の可能性を示唆してあげます。
「技術」を向上させるには長い反復練習が必要ですが、「準備」や「判断」はその瞬間から変えられます。
「次はこうしよう」という具体的な対策(Next Action)が、技術練習以外で見つかること。これこそが、運動神経に自信のない子が野球で生き残るための生存戦略です。
パパの役割は「赤ペン先生」ではなく「編集者」
最後に、ノートを見るパパのスタンスについて。
絶対にやってはいけないのは、赤ペン先生のように「字が汚い!」「もっとちゃんと書け!」と叱ることです。あるいは、「ここはもっとこうすべきだろ」と自分の意見を書き込むことです。これをやると、子供はパパに怒られないための「忖度ノート」を書くようになります。
パパの役割は、優秀な「編集者」であってください。
記者は子供です。編集者は、記者が書いた原稿(思考)をより深めるための質問を書き込みます。
- 「『悔しかった』と書いてあるけど、具体的にどの瞬間に一番悔しいと思った?」
- 「『次は頑張る』とあるけど、明日から具体的に何を変える?」
- 「この時のピッチャーの気持ちって、どんな感じだったと思う?」
ノートの隅に、こうした「問い」を付箋で貼っておくのです。
翌日、子供がその問いに対する答えを考え、また書き込む。この交換日記のようなやり取りこそが、言語化能力を飛躍的に高めます。
今日からできる「獅考力」トレーニング③:親子でやる「監督ごっこ」
最後は、お風呂の時間や車での移動中にできるトレーニングです。
名付けて「監督ごっこ」。
場面設定シミュレーション「ノーアウト満塁、君ならどうする?」
あなたがインタビュアーになり、子供に具体的なシチュエーションを与えます。
「いいか、今は最終回の裏。1点負けています。ノーアウト満塁です。バッターは君です。さて、監督からどんなサインが出ると思う?そして、君ならどうする?」
子供は考えます。
「うーん、満塁だからスクイズは難しいかな。外野フライでも1点入るから、最低でも外野に飛ばそうかな」
これに対し、さらに条件を加えます。
「でも相手の守備は『前進守備』だよ。外野手もかなり前に来てるよ。浅いフライだとホームで刺されるよ」
「えー!じゃあ、ゴロを打ったらホームゲッツーになっちゃうし……あ、じゃあ、間を抜くしかないから、初球から思い切り振る!」
正解はありません。重要なのは、「状況(条件)」が変われば「最適解」が変わるということを、シミュレーションを通じて体感させることです。
選択肢を増やしてあげるのが大人の役目
子供の思考はどうしても「打つ」「投げる」といった単純なものになりがちです。
そこに、大人の知恵として「選択肢」をプレゼントしてあげましょう。
例えば、守備の場面で。
「1点勝ってて最終回、ノーアウト満塁。君はサードを守ってます。強烈なゴロが飛んできました。どこに投げる?」
子供:「ホームに投げてアウトにする!」
パパ:「正解。じゃあ、もし5点勝ってたら?」
子供:「え?5点も?……やっぱりホーム?」
パパ:「5点も差があるなら、1点くらいあげてもいいよね。ホームで焦って暴投するより、確実に1塁でアウトを取って、アウトカウントを増やす方が安全かもしれないよ」
子供:「あ、そっか!点差によって守り方って変わるんだ!」
この「点差やイニングによる戦術の変化」は、まさに「野球脳」の核心部分です。
これはグラウンドでノックを受けていても身につきません。静かな場所で、頭の中で将棋のように駒を動かすことでしか養われないのです。
これこそ、体力も技術もいらない、未経験パパだからこそ教えてあげられる「大人の戦術論」です。

まとめ:120km投げられなくても、君には「考える頭」がある
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、ライオンズJr.の「筆記試験導入」というニュースをきっかけに、未経験パパが取り組むべき「獅考力」トレーニングについて解説しました。
要点を振り返りましょう。
- プロのトレンド変化: 「身体能力」だけでなく「言語化できる思考力(獅考力)」が求められている。
- 未経験パパの役割転換: 技術指導(ティーチング)は諦め、問いかけ(コーチング)に徹する。
- 3つの座学トレーニング:
- テレビ観戦での「予測クイズ」で、観察眼を養う。
- 「野球ノート」で、事実と解釈を分け、言語化能力を磨く。
- 「監督ごっこ」で、状況判断と戦術の引き出しを増やす。
私が伝えたいことは、一つです。
「技術を教えられないこと」を、コンプレックスに感じる必要は全くありません。
むしろ、技術がないからこそ、感覚に頼らず「頭」を使おうとする。
その姿勢を背中で見せることこそが、子供にとって最高の教育になります。
もし、お子さんが身体能力で周りに劣っていたとしても、あるいはレギュラーになれずに悩んでいたとしても、声をかけてあげてください。
「大丈夫。野球は筋肉だけでやるもんじゃない。誰よりも『準備』して、誰よりも『考える』ことができれば、必ずチャンスは来る」と。
そして、その言葉に説得力を持たせるために、今夜からさっそく、リビングで一緒に野球中継を見ながら「予測クイズ」を始めてみませんか?
「パパ、今の配球読んだの!?すごっ!」
そう言われた時、あなたの「信頼残高」はV字回復し、親子二人三脚の新しい野球ライフが幕を開けるはずです。
さあ、まずは今夜のビールと、おつまみの準備から始めましょうか。
応援しています、同志であるお父さん!
